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徒然草『悲田院の尭蓮上人は』のわかりやすい現代語訳

著者名: 走るメロス
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徒然草『悲田院の尭蓮上人は』原文・現代語訳と解説

このテキストでは、徒然草の一節『悲田院の尭蓮上人は』の原文、わかりやすい現代語訳・口語訳とその解説を記しています。




徒然草とは

徒然草は兼好法師によって書かれたとされる随筆です。清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』と並んで「古典日本三大随筆」と言われています。



原文(本文)

悲田院の尭蓮上人は、俗姓は三浦のとかや双無き武者なり。故郷の人の来たりて、物語すとて、
(※1)あづま人こそ、言ひつることは頼まるれ、(※2)都の人は、こと受けのみよくて、なし。」



と言ひしを、聖、
「それはさこそ(※3)おぼすらめども、己は都に久しく住みて、慣れて侍るに、人の心劣れりとは思ひ侍らず。なべて、心やはらかに、情けあるゆゑに、人の言ふほどのこと、(※4)けやけく(※5)いなび難くて、よろづ(※6)え言ひ放た心弱くこと受けしつ。偽りせんとは思はねど、乏しくかなはぬ人のみあれば、おのづから、本意通らぬこと多かるべし。あづま人は、我が方なれど、げには心の色なく、情けおくれひとへに(※7)すくよかなるものなれば、初めよりいなと言ひてやみぬ。にぎはひ豊かなれば、人には頼まるるぞかし。」



ことわられ侍りしこそ、この聖、声うちゆがみ荒荒しくて、聖教の細やかなるいとわきまへずもやと思ひしに、この一言の後、心にくくなりて、多かるなかに寺をも住持せらるるは、かくやはらぎたるところありて、その益もあるにこそとおぼえ侍りし。


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現代語訳(口語訳)

悲田院の尭蓮上人は、俗姓を三浦の何々とかいう人で、並ぶものがないほどの武者です。故郷の人が(尭蓮上人を)訪ねてきて、話すことには、
「東国の人は、口にしたことは信頼できますが、都の人は、受け答えだけは感じがよくて、誠実さがありません。」



と言ったので、僧(堯蓮上人)は
「あなたはそのようにお思いになっていますが、私は都に長年住んで、(都の事情に)慣れて理解しておりますので、(都の)人の心が(東国の人に比べて)劣っているとは思いません。(都の人は)一般に心が穏やかで、思いやりがあるために、人が言う(頼む)ぐらいのことは、きっぱりと断わりにくくて、万事につけて、遠慮なく言うことができないので、気弱く引き受けてしまうのです。嘘をつこうとは思わないのですが、貧乏で、(自分の)思い通りにならない人ばかりがいるので、自然と思うようにいかないことが多いのでしょう。



東国の人は、私の出身の人ではありますが、本当は心の優しさがなく、人情味に欠け、まったく無愛想なものなので、初めからいやだと言って終わってしまうのです。(東国の人は)富み栄えて、裕福なので、人から信頼されるのですよ。」

と事情を説明されたので(訪ねてきた人は、堯蓮上人のことを)、(東国出身の)この僧は、発音がなまり、(言い方も)粗野で、仏教の細かな道理はそれほどわきまえていないのではと思っていたのですが、この一言を聞いてからは、(堯蓮上人のことが)奥ゆかしく(思われるように)なり、(僧が)たくさんいる中でも、寺をも住職として管理なさっておられるのには、このように(心が)柔和なところがあって、そのおかげであるのだなあと思われたことでした。

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『教科書 精選古典B 』三省堂
ベネッセ全訳古語辞典 改訂版 Benesse
佐竹昭広、前田金五郎、大野晋 編1990 『岩波古語辞典 補訂版』 岩波書店
全訳読解古語辞典 第四版 三省堂

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