こまやかなり/細やかなり/濃やかなり
形容動詞・ナリ活用
未然形 | こまやかなら | ◯ |
連用形 | こまやかなり | こまやかに |
終止形 | こまやかなり | ◯ |
連体形 | こまやかなる | ◯ |
已然形 | こまやかなれ | ◯ |
命令形 | こまやかなれ | ◯ |
■意味1
こまごまとした様、小さい様子。
[出典]:初音 源氏物語
「御しつらひあるべきかぎりなれども、こまやかなる御調度は、いとしも調へたまはぬを」
[訳]:お部屋の設備も必要な物だけはありますが、こまごまとしたお道具類は、大してお揃えにはなっていらっしゃらないですが...
■意味2
詳しい、細々したところまで行き届いている、精密である。
[出典]:
悲田院の尭蓮上人は 徒然草
「...とことわられ侍りしこそ、この聖、声うちゆがみ、荒荒しくて、聖教の
細やかなる理いとわきまへずもやと思ひしに...」
[訳]:...と事情を説明されたので(訪ねてきた人は、堯蓮上人のことを)、(東国出身の)この僧は、発音がなまり、(言い方も)粗野で、仏教の
細かな道理はたいして心得ていないのではと思っていたのですが...
■意味3
親密である、愛情が深い、丁寧である。
[出典]:桐壺 源氏物語
「『今はなほ、昔の形見になずらへてものしたまへ。』など、こまやかに書かせたまへり。」
[訳]:「今はやはり、(私をなくなった桐壷の更衣の)形見と同じようなものとお思いください。』などと、丁寧にお書きになっています。
■意味4
色が濃い。
[出典]:
須磨の秋 源氏物語
「白き綾のなよよかなる、 紫苑色など奉りて、
こまやかなる御直衣、帯しどけなくうち乱れ給へる御さまにて...」
[訳]:白い綾織物の柔らかいもの(の上)に、紫苑色のものをお召しになって、
色が濃い御直衣に、帯も無造作にくつろぎなさったお姿で...
■意味5
繊細で上品である、きめ細かく潤いがある。
[出典]:総角 源氏物語
「こまやかなるにほひなど、うちとけて見まほしく...」
[訳]:繊細で上品な美しさなどを、くつろいで見ていたいと...
■意味6
にこやかな様。
[出典]:胡蝶 源氏物語
「御文を御覧じつけて、こまやかに笑ひたまふ。」
[訳]:お手紙を見つけになられて、にこやかにお笑いになります。