かなふ/叶ふ/適ふ
このテキストでは、古文単語「
かなふ/叶ふ/適ふ」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
①ハ行四段活用と②ハ行下二段活用がある。
①ハ行四段活用
未然形 | かなは |
連用形 | かなひ |
終止形 | かなふ |
連体形 | かなふ |
已然形 | かなへ |
命令形 | かなへ |
■意味1:自動詞
適合する、合致する。
[出典]:
高名の木登り 徒然草
「あやしき下臈なれども、聖人の戒めに
かなへり。」
[訳]:(この木登り名人は)身分の低い下人であるけれども、(言っていることは)徳の高い人の戒めと
合致しています。
■意味2:自動詞
思い通りになる、望みが現実になる。
[出典]:
今日はそのことをなさんと思へど 徒然草
「頼みたる方の事は違ひて、思ひ寄らぬ道ばかりは
かなひぬ。」
[訳]:あてにする方面のことは(期待と)食い違い、考えが及ばない方面のことだけが
思い通りになる。
■意味3:自動詞
できる。
※この用法の場合、打消の語を伴って「〜できない」となる場合が多い。
[出典]:
これも仁和寺の法師 徒然草
「とかくすれば、首のまはり欠けて、血垂り、ただ腫れに腫れみちて、息もつまりければ、打ち割らむとすれど、たやすく割れず。響きて堪へがたかりければ、
かなはで、すべきやうなくて...」
[訳]:(抜こうと)あれこれとすると、首の周りは傷ついて、血が垂れ、ひたすら腫れに腫れ、息も詰まってきたので、(足鼎を)たたき割ろうとするのだが、簡単には割れない。(足鼎をたたいたときの音が頭に)響いて我慢できなかったので、(打ち割ることが)
できず、手の施しようがないので...
■意味4:自動詞
匹敵する、対等に戦える。
※※この用法の場合、打消の語を伴って「対等に戦えない」となる場合が多い。
[出典]:
能登殿最期 平家物語
「判官の船に乗り当たつて、あはやと目をかけて飛んでかかるに、判官
かなはじとや思はれけん...」
[訳]:義経の船に乗り当たって、それっと目をつけて飛びかかると、義経は
対等に戦えないとお思いになったのでしょうか...
■意味5:自動詞
それでよい、それで済む。
[出典]:身死して 徒然草
「朝夕なくてかなはざらん物こそあらめ、その外は何も持たでぞあらまほしき。」
[訳]:朝夕なくてはそれで済まないものはよいが、それ以外は何も持たないでいたいものだ。
②ハ行下二段活用
未然形 | かなへ |
連用形 | かなへ |
終止形 | かなふ |
連体形 | かなふる |
已然形 | かなふれ |
命令形 | かなへよ |
■意味:他動詞
願いをかなえる、望みを成就させる。
[出典]:明石 源氏物語
「『思ふ心をかなへむ』、と仏神をいよいよ念じたてまつる。」
[訳]:「望みをかなえよう」と、神仏をますますお祈り申し上げる。