源氏物語『桐壺(光源氏の誕生・光る君誕生)』の本文をあらすじにまとめました
このテキストでは、
源氏物語「
桐壷」の冒頭『
光源氏の誕生』(
前の世にも御契りや〜)のあらすじと原文を記しています。書籍によっては『
光る君誕生』などと題するものもあるようです。
前回のテキスト
源氏物語『桐壷・光源氏の誕生(いづれの御時にか〜)』のあらすじ・原文
源氏物語とは
※
源氏物語は平安中期に成立した長編小説です。一条天皇中宮の藤原彰子に仕えた
紫式部が作者というのが通説です。
本文をあらすじにまとめました
桐壺帝と寵愛を受けた女性(以下、更衣)との間に、非常に美しい皇子が誕生しました。桐壺帝には、正室(以下、弘徽殿の女御)との間に第一の皇子がいました。弘徽殿の女御は右大臣の娘であることから、第一の皇子の後ろ盾はしっかりしており、皇太子になることが確実視されています。しかし、新しく生まれた皇子の生き生きとした美しさには比べることができず、帝は第一の皇子には普通の寵愛を示し、新しい皇子には特別な愛情を注いでいらっしゃいます。
更衣は元々、帝のお側仕えをするような身分ではないのですが、帝が片時も離さず傍に置いたために低い身分のように見えていました。しかし、この皇子が生まれてからは、帝は更衣に特別な心遣いを示すようになっていたので、新しく生れた皇子が皇太子になる可能性があるのではと弘徽殿の女御も疑念を抱くようになりました。
弘徽殿の女御は帝が若い時に入内した最初の女御であったため、帝はとても大切に思っていますが、その反面、弘徽殿の女御の意見を無下にすることもできずにいます。更衣は帝の庇護を頼りにしていましたが、彼女自身は体が弱く頼りない印象を受けているため、帝の寵愛を受けたことに対して複雑な思いを抱いています。
更衣の部屋の名前は「桐壷」と呼ばれています。
原文(本文)
前の世にも御
契りや
深かりけむ、世になく
清らなる玉の男御子さへ
生まれ給ひぬ。
いつしかと
心もとながらせ給ひて、急ぎ
参らせて
御覧ずるに、
めづらかなる稚児の御容貌なり。
一の皇子は、右大臣の女御の御腹にて、
寄せ重く、疑ひなき
儲の君[/url]と、世にもてかしづき聞こゆれど、この御
にほひには並び給ふべくもあらざりければ、
おほかたの
やむごとなき御思ひにて、この君をば、私物に
思ほしかしづき給ふこと
限りなし。
はじめより
おしなべての
上宮仕へし給ふべき際にはあらざりき。おぼえいとやむごとなく、
上衆めかしけれど、
わりなくまつはさせ給ふあまりに、さるべき御
遊びの折々、何事にもゆゑある事のふしぶしには、まづ
参上らせ給ふ、ある時には
大殿籠り過ぐして、やがて候はせ給ひなど、
あながちに御前去らずもてなさせ給ひしほどに、
おのづから軽き方にも
見えしを、この御子生まれ給ひて後は、いと
心異に思ほしおきてたれば、
坊にも、
ようせずは、この御子の
居給ふべきなめりと、一の皇子の女御は思し疑へり。
人よりさきに
参り給ひて、やむごとなき御思ひ
なべてならず、皇女たちなども
おはしませば、この御方の御諌めをのみぞなほ
わづらはしう、
心苦しう思ひ
きこえさせ給ひける。
かしこき御蔭をば頼み聞こえながら、
おとしめ疵を求め給ふ人は多く、わが身はか弱く
ものはかなきありさまにて、
なかなかなるもの思ひをぞし給ふ。
御局は桐壺なり。
現代語訳
源氏物語『桐壷・光源氏の誕生(前の世にも御契りや〜)』のわかりやすい現代語訳と解説
品詞分解
源氏物語『桐壷・光源氏の誕生(前の世にも御契りや〜)』の品詞分解(文法・助動詞など)
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は2億を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。