「きこゆ/聞こゆ」の意味・活用・使用例【ヤ行下二段活用】
このテキストでは、ヤ行下二段活用の動詞「
きこゆ/聞こゆ」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
ヤ行下二段活用
未然形 | きこえ |
連用形 | きこえ |
終止形 | きこゆ |
連体形 | きこゆる |
已然形 | きこゆれ |
命令形 | きこえよ |
■意味1:他動詞
(言ふの謙譲語で)
申し上げる。
[出典]:
中納言参りたまひて 枕草子
「『さては、扇のにはあらで、海月のななり。』と
聞こゆれば...」
[訳]:「それでは、扇の骨ではなくて、くらげの骨のようですね。」と(私が)
申し上げると...
■意味2:他動詞
(願ふの謙譲語で)
お願い申し上げる。
[出典]:絵合
源氏物語
「権中納言は、思ふ心ありて
聞こえたまひけるに...」
[訳]:権中納言は、思う所があって
お願い申し上げられましたが...
■意味3:他動詞
(手紙などを)
差し上げる。
[出典]:節は五月に 枕草子
「やむごとなき所々に御文など聞こえたまふ人も...」
[訳]:高貴である方々のところにお手紙などを差し上げなさる方も...
■意味4:補助動詞
お〜申し上げる、〜申し上げる。
※この用法の場合、動詞の連用形について用いられる。
[出典]:
かぐや姫の嘆き 竹取物語
「こは、なでふことのたまふぞ。竹の中より見つけ
聞こえたりしかど...」
[訳]:これは、何ということをおっしゃるのですか。竹の中から見つけ申し上げましたが...
■意味5:自動詞
(声や音が自然に)
耳に入る、聞こえる。
[出典]:
海賊の恐れ 土佐日記
「十五日、楫取らの『北風悪し』と言へば、舟出ださず。『海賊追ひ来』と言ふこと、絶えず
聞こゆ。」
[訳]:二十五日。船頭たちが、「北風が荒々しい。」と言うので、船を出さない。「海賊たちが追いかけてくる。」という噂が、絶えず
耳に入る。
■意味6:自動詞
世間に知られる、評判になる。
[出典]:
木曾最期 平家物語
「
きこゆる木曾の鬼葦毛といふ馬の、きはめてふとうたくましいに...」
[訳]:
世に名高い木曾の鬼葦毛という馬で、非常に太くたくましいのに...
■意味7:自動詞
理解できる、意味がわかる。
[出典]:世には心得ぬことの 徒然草
「聞こえぬことども言ひつつよろめきたる、いとかはゆし。」
[訳]:意味がわからないことを言いながらよろめき歩いているのは、本当に気の毒だ。