『亀山殿の御池に』
このテキストでは、
兼好法師が書いた
徒然草に収録されている「亀山殿の御池に」(亀山殿の御池に、大井川の水をまかせられむとて〜)の現代語訳・口語訳とその解説を記しています。
※徒然草は兼好法師によって書かれたとされる随筆です。清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』と並んで「古典日本三大随筆」と言われています。
原文(本文)
(※1)亀山殿の御池に、大井川の水を
まかせられむとて、大井の土民に
仰せて、水車を造らせられけり。多くの銭を
賜ひて、数日に
営み出だして、掛けたりけるに、
おほかた廻(めぐ)らざりければ、
とかく直しけれども、
つひに廻(まは)らで、
いたづらに立てりけり。
さて、宇治の里人を
召して、
こしらへさせられければ、
やすらかに結ひて
参らせたりけるが、思ふやうに廻りて、水を汲み入るゝ事
めでたかりけり。
万(よろづ)に、その道を
知れる者は、
やんごとなきものなり。
現代語訳(口語訳)
(後嵯峨天皇が、)亀山殿のお池に、大井川の水を引き入れなさろうとして、大井の住民に命じて、水車をお造らせになった。多くの金銭をお与えになって、数日かけてこしらえあげて、(水車を川に)かけたところ、まったくまわらなかったので、あれこれと直してみたけれど、最後までまわることはなく、(水車は)むだに立っているだけであった。
そこで、(水車で有名な)宇治の里の人をお呼びになって、(水車を)造らせなさったところ、(彼らは)たやすく(水車を)組み立てて献上したのだが、(その水車は)思うように回り、(亀山殿に)水を汲み入れることが見事であった。
すべてのことに(言えるが)、その道を理解している人は、尊いものだ。
品詞分解
※品詞分解:
『亀山殿の御池に』の品詞分解(動詞・助動詞など)
単語
(※1)亀山殿 | 後嵯峨天皇が営んだ離宮。人の名前ではない。 |