まゐらす/参らす
このテキストでは、古文単語「
まゐらす/参らす」の意味、活用、解説とその使用例を記しています。
「参らす」には、
①サ行下二段活用
②連語
の2つの活用方法があるので、混同しないように注意が必要。
①サ行下二段活用
未然形 | まゐらせ |
連用形 | まゐらせ |
終止形 | まゐらす |
連体形 | まゐらする |
已然形 | まゐらすれ |
命令形 | まゐらせよ |
※ラ行四段活用の動詞「参る」の未然形「まゐら」と使役の助動詞「す」がくっついた形であるが、
使役の意味が消えて一語となっている。
■意味1:他動詞
(「与ふ/遣る」の謙譲語で)
差し上げる、献上する。
[出典]:
中納言参りたまひて 枕草子
「隆家こそいみじき骨は得てはべれ。それをはらせて
参らせむとするに、おぼろけの紙はえ張るまじければ、求めはべるなり。」
[訳]:私、隆家は、素晴らしい骨を手に入れました。その骨に紙を張らせて(中宮様に)
差し上げようと思うのですが、ありきたりな紙を張ることはできないので、(それ相応の紙を)探しているところです。
■意味2:補助動詞
お〜申し上げる、〜て差し上げる。
[出典]:
宇治川の先陣 平家物語
「橋をばまたたれか渡いて
まゐらすべき。治承の合戦に足利又太郎忠綱は鬼神で渡しけるか。重忠瀬踏みつかまつらむ。」
[訳]:「橋をまた誰が架け
て差し上げることができましょうか、いやできないでしょう。治承の合戦のときに足利又太郎忠綱は、鬼神であったから渡ったのでしょうか。この重忠が瀬踏みを致しましょう。
②連語
ラ行四段活用の動詞「参る」の未然形「まゐら」と使役の助動詞「す」がくっついた形であり、こちらは①「参らす」と異なり、
使役の意味が残っている。そもそも「参らす」はこちらの意味が始まり。
■意味1
(「与ふ/遣る」の謙譲語で)
参上させる、伺わせる。
[出典]:
桐壷 源氏物語
「いつしかと心もとながらせ給ひて、急ぎ
参らせて御覧ずるに、めづらかなる稚児の御容貌なり。」
[訳]:(帝は子どもを)早く(見たい)と待ち遠しくお思いになられていたので、急いで(皇子を)
参上させてご覧になったところ、めったいないほど(美しい)赤ん坊の御容姿でいらっしゃいます。
■意味2
〜てし差し上げさせる。
[出典]:
宮に初めて参りたるころ 枕草子
「高坏に
参らせたる大殿油なれば...」
[訳]:高坏にお灯し
して差し上げさせた灯火なので...