「しる/知る」の意味・活用・使用例【ラ行四段活用・ラ行下二段活用】
このテキストでは、古文単語「
しる/知る」の意味、活用、解説とその使用例を記しています。
「しる」には
①「知る」
②「
治る/領る」
③「
痴る」
などの用法があり、それぞれ意味が異なる。ここでは「知る」を扱う。
※参照:
治る/領る/痴るの用法
知る
「知る」には、ラ行四段活用とラ行下二段活用の用法がある。
ラ行四段活用
未然形 | しら |
連用形 | しり |
終止形 | しる |
連体形 | しる |
已然形 | しれ |
命令形 | しれ |
■意味1:他動詞
理解する、わきまえる、わかる。
[出典]:
古今和歌集 小野小町
「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と
知りせば覚めざらましを」
[訳]:思いながら眠りについたので、(あの人が)夢に現れたのだろうか。もし夢と
わかっていたなら(夢から)覚めなかったろうに。
■意味2:他動詞
認める、見分ける、認識する。
[出典]:
猫また 徒然草
「飼ひける犬の、暗けれど、主を
知りて、飛び付きたりけるとぞ。」
[訳]:飼っていた犬が、暗かったけれども、主人(が帰ってきたの)を
見分けて、飛びついたということでした。
[出典]:
絵仏師良秀 宇治拾遺物語
「衣着ぬ妻子なども、さながら内にありけり。それも
知らず、ただ逃げ出でたるをことにして...」
[訳]:妻子も、そのまま家の中にいました。それを
認識することなく、ただ(自分が)逃げ出したことをよしとして...
■意味3:他動詞
経験する。
[出典]:
あだし野の露消ゆるときなく 徒然草
「かげろふの夕べを待ち、夏の蝉の春秋を
知らぬもあるぞかし。」
[訳]:蜻蛉が(朝に生まれて)夕方を待たずに(死に)、夏の蝉で春秋を
経験しない(で死ぬ)ものもあるのだ。
■意味4:他動詞
付き合う、恋仲になる。
[出典]:
馬のはなむけ・門出 土佐日記
「かれこれ、
知る知らぬ、送りす。」
[訳]:あの人やこの人、
付き合いのある人も付き合いない人も見送りをする。
[出典]:源氏物語 紫式部
「初めより、知り初めたりし方に渡り給はむ...」
[訳]:初めから、恋仲になりはじめた方のところへ移動なさるだろう...
■意味5:他動詞
世話をする。
[出典]:紫式部
源氏物語
「また、
知る人もなくて漂はむことの
あはれに...」
[訳]:
世話をする人もなく寄り所のない暮らしをすることが気の毒で...
■意味6:他動詞
〜できる。
※この用法の場合、下に打消の語を伴って使われる。
[出典]:万葉集 高橋虫麻呂
「言ひも得ず名付けも知らずくすしくもいます神かも...」
[訳]:(富士山は)言い表すこともできず、名付けることもできず、神秘的でいらっしゃる神であることよ...
ラ行下二段活用
未然形 | しれ |
連用形 | しれ |
終止形 | しる |
連体形 | しるる |
已然形 | しるれ |
命令形 | しれよ |
■意味1:自動詞
(世間の人に)
知られる。
[出典]:
通ひ路の関守 伊勢物語
「人
知れぬわが通ひ路の関守は宵々ごとにうちも寝な
なむ 」
[訳]:人に
知られることなく私が通う道の番人は、毎晩毎晩眠っていてほしいものです
※参照:
治る/領る/痴るの用法