源氏物語『若紫・北山の垣間見・若紫との出会ひ』の原文と現代語訳を徹底解説!
このテキストでは、
源氏物語「
若紫」の章の一節「
尼君、『いで、あな幼や。』〜」から始まる部分の原文、現代語訳・口語訳とその解説を記しています。書籍によっては「
北山の垣間見」や「
若紫との出会ひ」などと題するものもあるようです。
前回のテキスト
「日もいと長きにつれづれなれば〜」の現代語訳と解説
源氏物語とは
源氏物語は平安中期に成立した長編小説です。一条天皇中宮の藤原彰子に仕えた
紫式部を作者とするのが通説です。
原文(本文)
尼君、
とて、
「こちや。」
と言へば
ついゐたり。面つきいと
らうたげにて、眉のわたり
うちけぶり、
いはけなくかいやりたる額つき、髪ざし、
いみじううつくし。
ねびゆかむさま
ゆかしき人かなと、目
とまり給ふ。
さるは、
限りなう心を尽くし
聞こゆる人に、いとよう
似奉れるが、
まもらるるなりけりと思ふにも、涙ぞ
落つる。
※つづき:
源氏物語『若紫』(尼君、髪をかきなでつつ〜)の現代語訳と解説
現代語訳(口語訳)
尼君は、
「まったく、なんと幼いことですよ。幼稚でいらっしゃるのですね。私がこのように今日明日かと思われる命ですのに、なんともお思いにならないで、雀を追いかけていらっしゃることです。(生き物をとらえることは)罪を受けることだと、いつも申し上げているのに、情けない。」
と言って、
「こっちに(いらっしゃい)。」
と言うと、(少女は)膝をついて座りました。
顔つきがたいそうかわいらしく、眉のあたりがほんのりと美しく見え、あどけなく(髪を)かき上げた額の様子、髪の生え具合が、たいそうかわいらしいです。成長して大人になっていくであろう様子を見てみたい人だなと、(光源氏は)目をおとめになります。というのも、(光源氏が)この上なく恋い慕い申し上げている人に、(この少女が)大変よく似申し上げているので、じっと見つめないではいられないのだなと思うにつけても、涙がこぼれ落ちてしまいます。
※つづき:
源氏物語『若紫』(尼君、髪をかきなでつつ〜)の現代語訳と解説
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