けぶる/煙る/烟る
このテキストでは、ラ行四段活用の動詞「
けぶる/煙る/烟る」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
ラ行四段活用
未然形 | けぶら |
連用形 | けぶり |
終止形 | けぶる |
連体形 | けぶる |
已然形 | けぶれ |
命令形 | けぶれ |
■意味1:自動詞
煙が立つ、煙や霞で辺りが霞んで見える。
[出典]:若紫 源氏物語
「はるかに霞わたりて、四方の梢そこはかとなうけぶりわたれるほど...」
[訳]:遠くまで霞がかかって、まわりの木々の梢がどことなく一面にかすんで見えている辺りを...
■意味2:自動詞
芽吹く、(若葉が)萌え出る。
[出典]:柏木 源氏物語
「木だちいたうけぶりて...」
[訳]:木立(の若葉)がたいそう萌え出て...
■意味3:自動詞
ほんのりと美しく見える。
[出典]:
若葉・北山の垣間見 源氏物語
「面つきいとらうたげにて、眉のわたりうち
けぶり、いはけなくかいやりたる額つき、髪ざし、いみじううつくし。」
[訳]:顔つきがたいそうかわいらしく、眉のあたりが
ほんのりと美しく見え、あどけなく(髪を)かき上げた額の様子、髪の生え具合が、たいそうかわいらしいです。
■意味4:自動詞
火葬にされて煙となる。
[出典]:夫木抄
「むかひ居て見るにも悲しけぶりにし人を思ひの灰によそへて」
[訳]:向かって座って見るのも悲しい。火葬にされて煙となった人を恋しく思う火の灰になぞらえて