うつくし/愛し/美し
このテキストでは、シク活用の形容詞「
うつくし/愛し/美し」の意味、活用、解説とその使用例を記しています。
形容詞・シク活用
未然形 | うつくしく | うつくしから |
連用形 | うつくしく | うつくしかり |
終止形 | うつくし | ◯ |
連体形 | うつくしき | うつくしかる |
已然形 | うつくしけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | うつくしかれ |
■意味1
(肉親にや恋人に対して)
いとしい、恋しい、かわいい。
[出典]:万葉集
「父母を見れば尊し、妻子見ればめぐしうつくし。」
[訳]:父母を見ると尊い。妻子を見るといとしい。
■意味2
(幼い者、小さい物に対して)
かわいらしい、愛らしい。
[出典]:
源氏物語 紫式部
「さても、いと
うつくしかりつる稚かな...」
[訳]:それにしても、大変
かわいらしいこどもであった...
■意味3
立派だ、きれいだ、見事だ。
[出典]:大鏡
「色濃く咲きたる木の、様体うつくしきがはべりしを...」
[訳]:色濃く咲いた木で、かたちの立派なのがございましたのを...
■意味4
体裁がよい、手際がよい。
※この用法は、近世以降の作品で用いられる。
[出典]:西鶴織留
「うつくしう出替はりまで使うて暇出さるるは...」
[訳]:体裁よく入れ替わりの時期まで使って(から奉公人に)暇を出されるのは...
■備考
「うつくしう」は、「うつくし」の連用形のウ音便。