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源氏物語「車争ひ」(斎宮の御母御息所、もの思し乱るる慰めにもやと〜)のわかりやすい現代語訳と解説

著者名: 走るメロス
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源氏物語「車争ひ」

このテキストでは、源氏物語に収録されている「車争ひ」(斎宮の御母御息所、もの思し乱るる慰めにもやと〜)の現代語訳・口語訳とその解説をしています。

※前回のテキスト:「車争ひ」(日たけゆきて、儀式もさざとならぬ〜)のわかりやすい現代語訳と解説

原文・本文

(※1)斎宮の御母御息所もの思し乱るる慰めにもやと、忍び出でたまへるなりけり。つれなしつくれど、おのづから見知りぬ。
さばかりにては、さ(※2)な言はせそ。大将殿をぞ豪家には思ひきこゆらむ。」

など言ふを、その御方の人も交じれれば、いとほしながら、用意せむもわづらはしければ、知らず顔をつくる。つひに御車ども立て続けつれば、(※3)副車の奥に押しやられて、物も見えず。心やましきをばさるものにて、かかるやつれをそれと知られぬるが、いみじうねたきこと限りなし。榻などもみな押し折られて、すずろなる車の(※4)筒うちかけたれば、またなう人悪ろくくやしう、何に来つらむと思ふにかひなし

現代語訳・口語訳

(その車は)斎宮の御母御息所が、お心がお乱れでいらっしゃる慰めにもなろうかと、人目につかないようにお出かけになったのでした。(素性を隠して)なんでもないふりをしていますが、(葵の上側は乗っているのが御息所だと)自然と気づいてしまいました。(葵の上の従者が)
「その程度(の立場)であっては、そのように言わせるな。大将殿(光源氏)をより所だと(御息所は)思い申しているのだろう。」

などと言いますが、(葵の上の従者の中には)そのお方の人(光源氏に仕える人)もまざっているので、(御息所を)気の毒だと思いながら、気を配ろうとするのも面倒なので、知らない顔をします。とうとう(葵の上のお車が御息所のお車を押しのけてお二方の)お車(の列)が立て並んでしまったので、(御息所のお車は葵の上の)お供の者が乗る車の億に押しやられて、何も見えません。不愉快であるのはも言うまでもなく、このような忍びの姿をその人(御息所)と知られていしまったことが、ひどく悔しいことこの上ありません。榻などもすっかり押し折られて、(轅は)無関係な車の轂(こしき)に引っ掛けてあるので、またとなく体裁が悪く、(御息所は)後悔せずにはいられなく、何のために来たのだろうと思いますが(今となっては)どうしようもありません。

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『教科書 精選古典B 古文編 Ⅱ部』東京書籍
全訳読解古語辞典 第四版 三省堂
ベネッセ全訳古語辞典 改訂版 Benesse

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