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竹取物語『蓬莱の玉の枝(くらもちの皇子は〜)』わかりやすい現代語訳と解説 その1

著者名: 走るメロス
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竹取物語『蓬莱の玉の枝』

このテキストでは、竹取物語の一節「蓬莱の玉の枝」のあらすじ、現代語訳(口語訳)とその解説を記しています。5回にわたって解説をしていますが、このテキストはその1回目(くらもちの皇子は〜)です。



『蓬莱の玉の枝』関連テキスト

・竹取物語『蓬莱の玉の枝』その1(くらもちの皇子は〜)

・竹取物語『蓬莱の玉の枝』その2(かかるほどに、門をたたきて〜)

・竹取物語『蓬莱の玉の枝』その3(翁、皇子に申すやう、)

・竹取物語『蓬莱の玉の枝』その4(その山、見るに、さらに登るべきやうなし。~)

・竹取物語『蓬莱の玉の枝』その5(かかるほどに、男ども六人、つらねて~)


竹取物語とは

竹取物語は、平安時代初期に成立したとされる物語です。正確な成立年や作者は未詳です。


あらすじ

かぐや姫の美しさを聞いた男たちが、次々とかぐや姫に求婚していきます。しかしかぐや姫に結婚する気はなく、「私がリクエストしたものを持ってきてくれたら結婚を考える」と言います。かぐや姫に求婚した男性の1人は「車持皇子(くらもちのみこ)」という人物でした。車持皇子は、東方の海上にあるという蓬莱の玉の枝(根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝)をリクエストされます。

他の男4人は、それぞれリクエストされたものを必死に探しまわりますが、車持皇子は違いました。「蓬莱の玉の枝は、自分の財力をもってすれば作れなくはない。しばらく身を隠し、蓬莱の玉の枝を探しに出かけたふりをして、自分で作ってしまおう。」そう考えたのです。物語は、車持皇子が旅に出るシーンから始まります。



原文

くらもちの皇子は、心たばかりある人にて、(※1)公には、

「筑紫の国に湯あみにまからむ。」


とて(※2)いとま申して、かぐや姫の家には、

「玉の枝取りに(※3)なむまかる。」


と言はせて下りたまふに、仕うまつるべき人々皆難波まで御送りしけり。皇子、

「いと忍びて」


のたまはせて、人もあまたおはしまさず。近う仕うまつる(※4)限りして出でたまひ、御送りの人々見奉り送りて帰りぬ。

おはしましぬ。」


と人には見えたまひて、三日ばかりありて漕ぎ帰りたまひぬ。







かねてこと皆仰せたりければ、その時一の宝なりける鍛冶匠六人を召し取りて、たはやすく人寄りて来まじき家を造りて、かまどを三重にしこめて、匠らを入れたまひつつ、皇子も同じ所にこもりたまひて、しらせたまひたる(※5)限り十六所をかみに(※6)くどをあけて、玉の枝を作りたまふ。かぐや姫のたまふやうにたがはず作りいでつ。いとかしこくたばかりて、難波にみそかに持て出でぬ。





「舟に乗りて帰り来にけり。」


と殿に告げやりて、いといたく苦しがりたるさましてたまへり。迎へに人多く参りたり。玉の枝をば長櫃に入れて、物おほひて持ちて参る。いつか聞きけむ、

「くらもちの皇子は優曇華の花持ちて上りたまへり。」


ののしりけり。これをかぐや姫聞きて、われは皇子に負けぬべしと、胸うちつぶれて思ひけり。


※続く:竹取物語『蓬莱の玉の枝』(かかるほどに、門をたたきて〜)の現代語訳と解説

現代語訳

くらもちの皇子は策略にたけている人で、朝廷には

「筑紫の国に湯治に参ります。」


といって休暇を申し出て、かぐや姫の家には

「蓬莱の玉の枝を取りに出かけて行きます。」


と使者に言わせてお出かけになろうとするので、(皇子に)お仕え申し上げる人々は皆難波までお見送りしたのでした。皇子は、

「できるだけこっそりと。」


とおっしゃって、(お供の)人も多くはお連れになりません。身近にお仕え申し上げる人を限定して連れてお出かけになり、お見送りの人々は(皇子を)お見送り申し上げて帰りました。

「お出かけになられた。」


と人々にはお見せになり、三日ほど経って漕ぎ戻っていらっしゃいました。



(皇子は)あらかじめ(やることを)すべて命じていらっしゃったので、その当時国宝級であった(それほど技術の高い)鍛冶職人6人をお呼び寄せになって、簡単には近寄ってこれないような家を作り、かまどを3重に(した囲いの中に)込めて、鍛冶職人たちをおいれなさって、皇子も同じ場所におひそみになって、お治めになる全16箇所をはじめ全財産をつぎこんで、玉の枝をお作りになります。かぐや姫がおっしゃるように食い違わずに作りあげました。(そして)たいそう巧みに計画をたてて、(玉の枝を)難波までこっそりと持ち出したのです。

「船に乗って帰ってきました。」


と屋敷に(従者を)告げにやって、(自分は)たいそう疲れているふりをして留まっていらっしゃいます。多くの人が迎えにやってきましたが、玉の枝は長櫃にいれて、物で覆って持って参上します。(人々は)いつ聞いたのでしょうか、



「くらもちの皇子は、優曇華の花を持って上京なさった。」


と騒ぎたてました。これをかぐや姫は聞いて、私は皇子に負けてしまいそうだと、胸がうちつぶれそうな思いをしていたのでした。

※続く:竹取物語『蓬莱の玉の枝』(かかるほどに、門をたたきて〜)の現代語訳と解説

次ページ:品詞分解と単語・文法解説

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