まかる/罷る
このテキストでは、ラ行四段活用の動詞「
まかる/罷る」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
ラ行四段活用
未然形 | まから |
連用形 | まかり |
終止形 | まかる |
連体形 | まかる |
已然形 | まかれ |
命令形 | まかれ |
■意味1:自動詞
(「去る」の謙譲語で)
退出申し上げる、おいとまする。
[出典]:
万葉集 山上憶良
「憶良らは今は
罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむそ」
[訳]:この憶良はもう
おいとましましょう。(家で)子が泣いているでしょうし、その母も私を待っているでしょうから。
■意味2:自動詞
(「行く」の謙譲語で)
都から地方へと赴く、出かけて行く。
[出典]:
蓬莱の玉の枝 竹取物語
「玉の枝取りになむ
まかる。」
[訳]:蓬莱の玉の枝を取りに
出かけて行きます。
■意味3:自動詞
(「行く」の謙譲語・丁寧語で)
参る、参上する。
[出典]:平宣時朝臣、老の後、昔語りに 徒然草
「萎えたる直垂、うちうちのままにて罷りたりしに...」
[訳]:着慣れてやら若くなった直垂で、家にいる普段着のまま参上したところ...
■意味4:自動詞
(「行く」の謙譲語・丁寧語で)
参ります、行きます。
[出典]:
若紫・北山の垣間見 源氏物語
「いづ方へか
まかりぬる。いとをかしう、やうやうなりつるものを。」
[訳]:どこへ
行ってしまったのでしょう。とても可愛らしく、だんだんなっていましたのに。
■意味5:自動詞
この用法の場合、「まかり+動詞」の形で、謙譲・丁寧の意味を表す。
[出典]:箒木 源氏物語
「ある博士のもとに、学問などをしはべるとて、まかり通ひし程に...」
[訳]:(私が)ある博士のもとに、学問などをしますということで、通って参りましたころに...