竹取物語『蓬莱の玉の枝』その2
このテキストでは、
竹取物語の一節「
蓬莱の玉の枝」(かかるほどに、門をたたきて〜)の現代語訳(口語訳)とその解説を記しています。長いので5回にわたって解説をしていますが、このテキストはその2回目です。
※前回のテキスト:
竹取物語『蓬莱の玉の枝』(くらもちの皇子は〜)の現代語訳と解説
前回のあらすじ
かぐや姫から、蓬莱の玉の枝を持ってくるように言われた車持皇子は、本物を探しに行くのではなく、自分の財力と、当時最高の技術を使って偽物の蓬莱の玉の枝をこしらえました。京に戻ってきた車持皇子は、蓬莱の玉の枝を持ってかぐや姫のもとを訪れるのですが...
原文
かかるほどに、門をたたきて、
と告ぐ。
「旅の御姿ながらおはしたり。」
と言へば、会ひ奉る。皇子
のたまはく、
とて、
「かぐや姫に見せ奉りたまへ。」
と言へば、翁持ちて入りたり。この玉の枝に文(ふみ)ぞ付きたりける。
これを
あはれとも見でをるに、竹取の翁走り入りていはく、
と言ふに、物も言はで、
(※2)つらづゑをつきて、
いみじう嘆かしげに思ひたり。この皇子、
「今さへなにかと言ふべからず。」
と言ふままに、縁にはひ上りたまひぬ。翁、
ことわりに思ふに、
「この国に
見えぬ玉の枝なり。このたびは、いかでか
いなび申さむ。
(※3)さまもよき人におはす。」
など言ひゐたり。かぐや姫の言ふやう、
取りがたきものを、かく
あさましくて持てきたることを
ねたく思ひ、翁は、
(※4)閨(ねや)のうち、
(※5)しつらひなどす。
※つづき:
竹取物語「蓬莱の玉の枝」(翁、皇子に申すやう〜)の現代語訳と解説
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