たがふ/違ふ
このテキストでは、古文単語「
たがふ/違ふ」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
※たがふ/違ふには、
①ハ行四段活用
②ハ行下二段活用
の用法がある。
①ハ行四段活用
未然形 | たがは |
連用形 | たがひ |
終止形 | たがふ |
連体形 | たがふ |
已然形 | たがへ |
命令形 | たがへ |
■意味1:自動詞
(予測や希望と)
食い違う、一致しない。
[出典]:
蓬莱の玉の枝 竹取物語
「かぐや姫のたまふやうに
違はず作りいでつ。」
[訳]:かぐや姫がおっしゃるように
食い違わずに作りあげました。
■意味2:自動詞
背く、さからう、気持ちに添わなくなる。
[出典]:
いでや、この世に生まれては 徒然草
「増賀聖の言ひけむやうに、名聞苦るしく、仏の御教へに
違ふらむとぞおぼゆる。」
[訳]:増賀聖が言ったということですが、世間的な名声(に執着すること)はつらく、仏の教えに
背いていると思えます。
■意味3:自動詞
変わる、いつもと異なる状態になる。
[出典]:若菜下 源氏物語
「いといと恥づかしきに、顔の色違ふらむ...」
[訳]:とても気がひけるので、顔の色がいつもと異なっているのだろう...
②ハ行下二段活用
未然形 | たがへ |
連用形 | たがへ |
終止形 | たがふ |
連体形 | たがふる |
已然形 | たがふれ |
命令形 | たがへよ |
■意味1:他動詞
(予測や希望と)
異なるようにする、食い違わせる、背く。
[出典]:桐壷 源氏物語
「ただ、かの遺言を違へじとばかりに、出だし立てはべりしを...」
[訳]:ただ、あの(亡くなった大納言の)遺言に背くまいというだけで、(娘を宮仕えに)出しましたのに...
■意味2:他動詞
間違える。
[出典]:
競べ弓・弓争ひ 大鏡
「朝廷ざまの公事・作法ばかりにはあるべきほどにふるまひ、時
違ふことなく勤めさせ給ひて...」
[訳]:朝廷での行事や儀式だけは身分相応に振るまい、時間を
間違えることなくお勤めになられましたが...
■意味3:他動詞
方違えする。
[出典]:帚木 源氏物語
「二条院にも同じ筋にて、いづくにか違へむ。」
[訳]:二条院も同じ方角なので、どちらに方違えしようか。