源氏物語『若紫・北山の垣間見・若紫との出会ひ』の現代語訳
このテキストでは、
源氏物語の一節『
若紫』(
あはれなる人を見つるかな。〜)の原文、わかりやすい現代語訳・口語訳とその解説を記しています。書籍によっては、「
北山の垣間見」や「
若紫との出会ひ」などと題するものもあるようです。
※前回のテキスト:
源氏物語「若紫」(尼君、髪をかきなでつつ〜)の現代語訳と解説
※
源氏物語は平安中期に成立した長編小説です。一条天皇中宮の藤原彰子に仕えた
紫式部を作者とするのが通説です。
原文(本文)
あはれなる人を
見つるかな。
かかれば、このすき者どもは、
かかる歩きをのみして、よくさるまじき人をも
見つくるなりけり。
たまさかに立ち出づるだに、かく思ひのほかなることを見るよと、
をかしう思す。
さても、いと
うつくしかりつる稚かな、何人ならむ、
かの人の御代はりに、明け暮れの慰めにも見ばや、と思ふ心
深うつきぬ。
現代語訳(口語訳)
素敵な人を見たものだなぁ。このよう(かわいい人が目に留まるの)であるから、この色好者たちは、このような忍び歩きばかりして、よく意外な人を見つけになるものだなぁ。偶然に出てきてさえ、このように思いがけないことに出会うものだよと、面白くお思いになります。ほんとにまあ、大変かわいらしい子であった、どのような人なのだろう、あの人の御代わりに、明け暮れの慰めに(あの子を)見たいものだ、と思う心が深くなっていきました。
品詞分解
※品詞分解:
源氏物語「若紫・北山の垣間見(あはれなる人を見つるかな〜)」の品詞分解
単語解説
あはれなり | しみじみとかわいい、素敵だ |
たまさかなり | 偶然である、たまたまである |
をかしう | 形容詞「をかし」の連用形「をかしく」のウ音便。 |
かの人 | ここでは藤壺を指している |
深う | 形容詞「深し」の連用形「ふかく」のウ音便 |