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源氏物語『葵・物の怪の出現』(あまりいたう泣き給へば〜)の現代語訳と解説

著者名: 走るメロス
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源氏物語『葵・物の怪の出現』

このテキストでは、源氏物語の『葵』の章から、「あまりいたう泣き給へば〜」から始まる部分の現代語訳(口語訳)とその解説を記しています。書籍によっては『葵の上』、『物の怪の出現』『御息所のもの思い』とするものもあるようです。



※前回のテキスト:「まださるべきほどにもあらず〜」の現代語訳と解説

※源氏物語は平安中期に成立した長編小説です。一条天皇中宮の藤原彰子に仕えた紫式部が作者とするのが通説です。
原文

あまりいたう泣き給へば、
心苦しき親たちの御ことを思し、またかく見給ふにつけて口惜しうおぼえ給ふにや。」

と思して、
「何ごともいとかうな思し入れそ。さりともけしうはおはせじ。いかなりとも必ず逢ふ瀬あなれば、対面はありなむ。大臣、宮なども、深き契りある仲は、めぐりても絶えざなれば、あひ見るほどありなむと思せ。」

と慰め給ふに、
「いで、あらずや。身の上のいと苦しきを、しばしやすめ給へと聞こえむとてなむ。かく参り来むともさらに思はぬを、もの思ふ人の魂はげにあくがるるものになむありける。」

となつかしげに言ひて、

嘆きわび空に乱るるわが魂を 結びとどめよ下交ひのつま

とのたまふ声、けはひ、その人にもあらず変はり給へり。

「いとあやし。」

と思しめぐらすに、ただかの御息所なりけり。あさましう、人のとかく言ふを、よからぬ者どもの言ひ出づることと聞きにくくおぼしてのたまひ消つを、目に見す見す、
「世にはかかることこそはありけれ。」

と、うとましうなりぬ。

現代語訳(口語訳)

(葵の上が)あまりひどくお泣きになるので、



「(娘に先立たれる)気の毒なご両親たちのことをお思いになり、またこのように(光源氏のことを)御覧になるにつけて残念にお思いになるのでしょうか。」

と(光源氏は)お思いになり、
「何事につけてもひどくこのように思いつめなさらないでください。そうはいっても悪くいらっしゃるわけではありますまい。どのようになっても必ず(来世で)逢う機会があるといいますから、きっとお逢いできましょう。大臣や宮などの、深い縁のある (人たちとの)仲は、生まれ変わっても途切れないと言いますから、逢うことがあるであろうとお考えなさい。」

とお慰めになりますが、

「いえ、そうではありません。(祈祷が強すぎて)体がとても苦しいので、少し休めてくださいと申し上げようと思いまして。このように参上しようとは少しも思ってもいないのに、物思いする人の魂は、なるほど、(体から)魂が抜け出るものでした。」

と(葵の上は)親しそうに言って
嘆きわずらう気持ちから、(体から離れて)空に迷う私の魂を結びとどめてください、着物の裾の両端を結ぶかのように

とおっしゃる声や雰囲気は、その人(葵の上)のものではなくお変わりになっています。
「たいそう変だ。」



と(光源氏が)お考えをめぐらしていると、(葵の上の体に乗り移ったのは)まさにあの御息所なのでした。驚くことだ、人があれやこれやとうわさするのを、下々の者たちが言い出すことだと聞いていて不愉快だとお思いになって無視していらっしゃったのに、目の前に見ているうちに、
「世の中にはこのようなことがあるのだなあ。」

と、気味が悪くなったのです。

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佐竹昭広、前田金五郎、大野晋 編1990 『岩波古語辞典 補訂版』 岩波書店
『教科書 精選古典B』大修館

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