さても/然ても
このテキストでは、古文単語「
さても/然ても」の意味、解説とその使用例を記している。
「さても」には
①副詞
②接続詞
③感動詞
の用法がある。
①副詞
■意味1
そうであっても、それでも。
[出典]:若紫 源氏物語
「昼はさてもまぎらはしたまふを、夕暮となれば、いみじく屈したまへば...」
[訳]:昼間はそれでも気を紛らわしていらっしゃいますが、夕暮れとなると、たいそうふさぎ込んでしまわれるので...
■意味2
そのまま、そうして。
[出典]:
小野の雪 伊勢物語
「
さても候ひてしがなと思へど、公事どもありければ、え候はで...」
[訳]:(馬の頭は)
そのままお側にお仕えし申し上げたいとは思うのですが、朝廷でのお勤めがあったので、とてもお側にいることはできずに...
②接続詞
■意味
それにしても、それはそうと、ところで。
※話題を転換するときに用いられる。
[出典]:
三船の才 大鏡
「「作文のにぞ乗るべかりける。さてかばかりの詩をつくりたらましかば、名の上がらむこともまさりなまし。口惜しかりけるわざかな。
さても、殿の、『いづれにかと思ふ』とのたまはせしになむ、我ながら心おごりせられし。」
[訳]:「漢文を作る舟に乗ればよかったなぁ。そしてこれぐらいのの漢詩を作ったならば、名声の上がることもよりあっただろうに。残念なことです。
それにしても、入道殿が、『どの舟に乗るのか。』と仰られたことは、(私には漢詩の才能も、管絃の才能も、和歌の才能もあると見越しての発言であり、それを聞いた私は)我ながら得意気になったものです。
③感動詞
■意味
ほんとにまあ、それにしてもまあ。
[出典]:
若紫・北山の垣間見 源氏物語
「
さても、いとうつくしかりつる稚かな...」
[訳]:
ほんとにまあ、大変かわいらしい子であった...