をかし
このテキストでは、シク活用の形容詞「
をかし」の意味、活用、解説とその使用例を記しています。
①形容詞・シク活用
未然形 | をかしく | をかしから |
連用形 | をかしく | をかしかり |
終止形 | をかし | ◯ |
連体形 | をかしき | をかしかる |
已然形 | をかしけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | をかしかれ |
■意味1
趣がある、風情がある。
[出典]:
枕草子 清少納言
「ただ一つ二つなど、ほのかにうち光て行くも
をかし。」
[訳]:蛍の一匹や二匹が、かすかに光って飛んでいるのも
趣がある。
■意味2
こっけいだ、笑いたくなる。
[出典]:今昔物語
「妻、をかしと思ひて、笑ひてやみにけり。」
[訳]:妻はこっけいだと思って、笑って(夫を責めるのを)やめました。
■意味3
興味深い、おもしろい。
[出典]:竹取物語
「をかしきことにもあるかな。もつともえ知らざりけり。」
[訳]:興味深いことである。まったく知らなかったことだ。
■意味4
美しい、愛らしい、かわいい、すぐれている、素晴らしい。
[出典]:
源氏物語 紫式部
「けづることをうるさがり給へど、
をかしの御髪や。」
[訳]:髪をとかすことをお嫌がりになりますが、
美しい御髪ですね。
[出典]:更級日記 菅原孝標女
「笛をいとをかしく吹き澄まして、過ぎぬなり。」
[訳]:笛をとても素晴らしく吹いて、通り過ぎていったようです。
■をかしう
「をかしう」は、「をかし」の連用形「をかしく」のウ音便。
■「あはれなり/おもしろし」との違い
「風情がある、興味深い」という意味では「をかし/あはれなり/おもしろし」は共通している。しかし、次のような微妙なニュアンスの違いがある。
をかし | 自分の持っている価値観がある対象と一致したときに感じる感動や情緒を表すあはれなりとは対照的な感情。 |
あはれなり | しみじみと心が動かされるような情緒を表す。をかしとは対照的な感情。 |
おもしろし | 目の前が明るくなり、心が晴れやかにはるような感情を表す。 |
参照:
あはれなりの意味
参照:
おもしろしの意味
②名詞:犯し
■意味
犯した罪
[出典]:源氏物語 紫式部
「命尽きなむとするは、前の世の報いか、この世の犯しか...」
[訳]:今にも命が尽きようとしているのは、前世の報いか、この世で犯した罪のせいか...