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竹取物語『蓬莱の玉の枝』 わかりやすい現代語訳・解説 その2

著者名: 走るメロス
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現代語訳

こうしているうちに、(かぐや姫の家の)門をたたいて、
「くらもちの皇子がいらっしゃいました。」


と(従者が)告げます。
「旅のお姿ながらいらっしゃいました。」

というので、(翁は皇子に)お会い申し上げます。皇子がおっしゃることには、
「命を捨てる覚悟で、あの玉の枝を持ってきました。」

といって、
「かぐや姫にお見せ申し上げ下さい。」

と言うので、翁は(玉の枝を)持って(中に)入って行きます。この玉の枝には手紙がつけてありました。



(たとえ)むなしく死んでしまっても、玉の枝を折らずにむなしく帰ってくることはしなかったでしょう。

(かぐや姫は)これが特に情緒深い(歌だ)とも思わずにいたのですが、竹取の翁が走りこんできて言うことには、
「この皇子に(お願いし)申し上げた蓬莱の玉の枝を、ひとつの間違いもなく持っていらっしゃっています。(これ以上)何をもってあれこれと申すのでしょうか。(皇子は)旅のお姿のまま、ご自宅へもお立ち寄りにならないで(こちらに)いらっしゃいました。はやくこの皇子に嫁ぎ仕え申し上げください。」

と言うので、(かぐや姫は)物も言わないで、頬杖をついて、たいそう嘆かわしそうにしています。


この皇子は、
「今さらどうこう言うことはできないでしょう。」

と言って、縁側に這って上がっていらっしゃいました。(竹取の)翁は、(車持皇子の言うことが)道理だと思い、
「この国では見ることのできない玉の枝です。今回は、どうしてお断り申せましょう。(皇子は)身なりも良いお方でいらっしゃいます。」

などと言います。かぐや姫が言うことには、
「親のおっしゃることを、ひたすらにお断り申し上げることの気の毒さに(手に入れるのが難しい物をリクエストしたのですが)。」


手に入れるのが難しい物を、このように意外にも玉の枝を持ってきたことをいまいましく思い、翁は寝室の中を、調度品の飾り付けなどをしています。

※つづき:竹取物語「蓬莱の玉の枝」(翁、皇子に申すやう〜)の現代語訳と解説

単語

(※1)まし推量の意味を表す助動詞
(※2)つらづゑ頬杖
(※3)さま身なり・容姿
(※4)閨(ねや)寝室
(※5)しつらひ調度品を整え飾り付けること



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著者情報:走るメロスはこんな人

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。
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・竹取物語『蓬莱の玉の枝』 わかりやすい現代語訳・解説 その2

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『教科書 高等学校国語 国語総合 古典編』 東京書籍
佐竹昭広、前田金五郎、大野晋 編1990 『岩波古語辞典 補訂版』 岩波書店
『教科書 高等学校 国語総合 古典編』 東京書籍

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