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枕草子『にくきもの』(ものうらやみし、身の上嘆き~)現代語訳・口語訳と解説 |
著作名:
走るメロス
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枕草子『にくきもの・後編』の原文・わかりやすい現代語・解説
このテキストでは、『枕草子』から「にくきもの」の一節(ものうらやみし、身の上嘆き~)のわかりやすい現代語訳・口語訳とその解説を記しています。2回にわたってお送りしますが、今回はその2回目です。
前回のテキスト:枕草子『にくきもの・前編』(急ぐことあるをりに来て~)の現代語訳
枕草子とは
枕草子は清少納言によって書かれたとされる随筆です。清少納言は平安時代中期の作家・歌人で、一条天皇の皇后であった中宮定子に仕えました。ちなみに枕草子は、兼好法師の『徒然草』、鴨長明の『方丈記』と並んで「古典日本三大随筆」と言われています。
原文
ものうらやみし、身の上嘆き、人の上言ひ、露塵のこともゆかしがり、聞かまほしうして、言ひ知らせぬをば怨じそしり、また僅かに聞き得たることをば、わがもとより知りたることのやうに、異人にも語りしらぶるも、いとにくし。
もの聞かむと思ふほどに泣くちご。烏の集まりて飛び違ひ、さめき鳴きたる。
忍びて来る人、見知りてほゆる犬。あながちなる所に隠し臥せたる人の、いびきしたる。また、忍び来る所に、長烏帽子して、さすがに人に見えじとまどひ入るほどに、ものにつきさはりて、そよろといはせたる。伊予簾など掛けたるに、うちかづきて、さらさらと鳴らしたるも、いとにくし。帽額の簾はまして、(※1)こはしのうち置かるる音、いとしるし。それも、やをら引き上げて入るは、(※2)さらに鳴らず。遣戸を、荒くたてあくるも、いとあやし。すこしもたぐるやうにしてあくるは、鳴りやはする。あしうあくれば、障子なども、こほめかしうほとめくこそ、しるけれ。
ねぶたしと思ひて臥したるに、蚊の細声にわびしげに名のりて、顔のほどに飛びありく。羽風さへ、その身のほどにあるこそ、いとにくけれ。
きしめく車に乗りてあるく者。耳も聞かぬ(※3)にやあらむと、いとにくし。わが乗りたるは、その車の主さへにくし。
また、物語するに、さしいでして、我ひとりさいまくる者。すべてさしいでは、童も大人いともにくし。
現代語訳
何かにつけて人のことをうらやましがり、(自分の)身上を嘆き、他人について噂をし、ほんのわずかなことでも知りたがり、聞きたいと思って、話して知らせないことに恨みを言い非難し、また少し聞きかじったことを、自分がはじめから知っていることのように、他の人にも得意げに話すのも、たいそうしゃくに障る。
話を聞こうと思うと泣く子ども。カラスが集まって飛びかい、さわがしく鳴いている(のはしゃくに障る。)
人目につかないように(夜に女性の家に遊びにやって)きた人に、気づいてほえる犬。(内緒で通ってきた男性が家の人に見つかってしまうので)無理な所に隠しておいた人が、いびきをしたの(はしゃくに障る)。また、人目につかないように来る所に、長烏帽子をつけて、そうはいっても人に見られないようにと思って慌てて中に入るときに、(烏帽子が)物につきあたって、がさっと音をたてるの(はしゃくに障る)。伊予の国産の簾(すだれ)などが掛けてあるのを、(くぐるときにそれを)頭にのせて、さらさらと音をたてさせるのも、たいそうしゃくに障る。帽額の簾はさらに、木端が敷居にあたる音が、たいそうはっきりしている(ので耳に障る)。それも、そっと引いて上にあげるときは、少しも音がしない。引き戸を、荒っぽく閉めたり開けたりするのも、とてもけしからんことだ。そっと持ち上げて(戸を)開けるならば、(音が)するだろうか、いやしない。下手に開けると、障子などでも、ゴトゴトコトコトと音をたてるので、(人が訪ねてきたのが)際立ってしまう。
眠たいと思って横になっていると、蚊が細い声でやるせなさそうに羽音をたてて、顔のあたりを飛び廻っている(のはしゃくに障る)。羽風さえも、その身の丈にあう(大きさの音である)ことも、たいそうしゃくに障る。
きしきしと音をたてる牛車に乗って歩きまわる者(はしゃくに障る)。耳が(きしきしという音を)聞かないのだろうかと、たいそうしゃくに障る。自分が乗っている(牛車がそんな音をたてた)ときは、その牛車の持ち主までもがしゃくに障る。
また、世間話をしているときに、でしゃばって、自分ひとり口出しする者(はしゃくに障る)。総じてでしゃばりは、子どもも大人もたいそうしゃくに障る。
単語・文法解説
(※1)こはし | すだれの上下両端につけられた薄い板。「こはじ(木端)」とも |
(※2)さらに鳴らず | 「さらに~ず」で「全く~ない」 |
(※3)にやあらむ | 「~であろうか」。断定の助動詞「なり」の連用形「に」+係助詞「や」+ラ行変格活用「あり」の未然形+推量の助動詞「む」の連体形 |
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