ふす/伏す/臥す
このテキストでは、古文単語「
ふす/伏す/臥す」の意味、活用、解説とその使用例を記しています。
※「ふす」には
①サ行四段活用
②サ行下二段活用
の用法がある。
①サ行四段活用
未然形 | ふさ |
連用形 | ふし |
終止形 | ふす |
連体形 | ふす |
已然形 | ふせ |
命令形 | ふせ |
■意味1:自動詞
うつぶせになる、ひれふす、倒れ伏す。
[出典]:
竹取物語
「猛く思ひつる造麻呂も、物に酔ひたる心地して、うつぶしに
伏せり。 」
[訳]:(先ほどまで)勇ましく思っていた造麻呂も、物に心を奪われたような気分がして、うつぶせに
伏せています。
■意味2:自動詞
横になる、寝る。
[出典]:
枕草子 清少納言
「御前なる人々、一人二人づつ
失せて、御屏風・御几帳のうしろなどにみな
隠れ ふしぬれば...」
[訳]:仕えている女房たちは、一人二人ずつ退出して、御屏風や御几帳の後ろなどに皆隠れて
寝てしまいましたので...
■意味3:自動詞
隠れる、潜む、隠れ住む。
[出典]:平家物語
「草の深いに伏さうどて、播磨の鹿は丹波へ越えて...」
[訳]:草の深いところに隠れようと思って、播磨にいる鹿は丹波へ越えて行き...
②サ行下二段活用
未然形 | ふせ |
連用形 | ふせ |
終止形 | ふす |
連体形 | ふする |
已然形 | ふすれ |
命令形 | ふせよ |
■意味1:他動詞
横にさせる、寝かせる。
[出典]:源氏物語 紫式部
「つひにこれを尋ねとりて、夜もあたり近く、ふせたまふ。」
[訳]:しまいにこれ(猫)を手に入れて、夜も自分の側に、寝かせなさる。
■意味2:他動詞
うつむかせる。
[出典]:源氏物語 紫式部
「亡き親の面をふせ、影をはづかしむるたぐひ多く聞こゆる。」
[訳]:亡き親の顔をうつむかせて、死後の名誉を汚すような例がたくさん聞かれる。
■意味3:他動詞
押さえつける、押し倒す。
[出典]:
宇治拾遺物語
「...と、人の申しければ、さきざきするやうにし
伏せて...」
[訳]:...と従者が申し上げると、以前のように
押さえつけて...
■意味4:他動詞
隠す、潜ませる。
[出典]:古今和歌集
「主聞きつけて、かの道に夜ごとに人を伏せて守らすれば...」
[訳]:主人が聞きつけて、例の道に毎晩人を潜ませて見張らせたので...