伊勢物語『筒井筒・後編』の原文・現代語訳と解説
このテキストでは、
伊勢物語の23段『筒井筒』の「
まれまれかの高安に来てみれば〜」から始まる部分の現代語訳・口語訳とその解説をしています。3回にわけて解説していますが、このテキストはその3回目です。
※第1回のテキスト:
筒井筒「昔、田舎わたらひしける人の〜」の現代語訳と解説
※第2回のテキスト:
筒井筒「さて、年ごろ経るほどに〜」の現代語訳と解説
伊勢物語とは
伊勢物語は平安時代初期に書かれた歌物語です。作者は未詳ですが、
在原業平がモデルではないかと言われています。
原文(本文)
まれまれかの高安に来てみれば、初めこそ
心にくくもつくりけれ、今は
うちとけて、
手づから飯匙取りて、
笥子のうつはものに盛りけるを
見て、
心うがりて行かずなりにけり。
さりければ、かの女、大和の方を
見やりて、
と言ひて
見出だすに、
からうじて、大和人
「来む。」
と言へり。
喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、
と言ひけれど、男
住まずなりにけり。
現代語訳(口語訳)
(男が)ごくまれに例の高安(の女の元)に来てみると、(女は)初めこそ奥ゆかしくよそおっていたのですが、今は慣れ親しんで、自分でしゃもじを手にとって、(お米を)器によそったのを見て、(男は)うんざりして行かなくなってしまいました。そういうわけで、例の女は、(男が住む)大和の方を眺めて、
あなたがいらっしゃるあたりを見続けておりましょう。生駒山を、雲よ、隠さないでおくれ。雨は降ろうとも。
※
歌の解説
と言って外を眺めていると、ようやく、大和の人(男)が、
「(あなたのもとへ)行こう。」
と言ってきました。(高安の女は)喜んで待つのですが、その度に(男はやってくることなく時間がむなしく)過ぎてしまったので、
あなたが来ようと言った夜ごとに、(むなしく時間が)過ぎてしまったので、(もう)あてにはしていませんが、(やはりあなたを)慕いながら過ごしています。
※
歌の解説
と言ったのですが、男は(高安へは)通わなくなってしまいました。
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