はじめに
このテキストでは、
伊勢物語の23段『
筒井筒』そして『新古今和歌集』に収録されている歌「
君来むと言ひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞ経る」の現代語訳・口語訳と解説(係り結びなど)、そして品詞分解を記しています。
原文
君来むと 言ひし夜ごとに 過ぎぬれば
頼まぬものの
恋ひつつぞ
ふる
ひらがなでの読み方
きみこむと いひしよごとに すぎぬれば たのまぬものの こひつつぞふる
現代語訳(口語訳)
あなたが来ようと言った夜ごとに、(むなしく時間が)過ぎてしまったので、(もう)あてにはしていませんが、(やはりあなたを)慕いながら過ごしています。
解説
伊勢物語には次のように記述があります。
本妻がいる男が、高安に新しく作った女のもとにたまに来てみると、女は、付き合い初めのうちは奥ゆかしく振る舞っていたのだが、次第に自らお茶碗にお米をよそうようになり(当時は侍女の仕事とされた)、男の心は離れていった。男が通ってこなくなったので、女が、男の住む大和の方を眺めて
歌を詠んだところ、ようやく男が「行こう」と返事をよこした。しかし、「行く行く」と言って一向にやってこない男に対して女が詠んだ歌。
技法
■係り結び
「恋ひつつぞふる」の「ぞ〜ふる」が係り結びとなっています。
品詞分解
※名詞は省略しています。
君 | 代名詞 |
来 | カ行変格活用「く」の未然形 |
む | 意志の助動詞「む」の終止形 |
と | 格助詞 |
言ひ | ハ行四段活用「いふ」の連用形 |
し | 過去の助動詞「き」の連体形 |
夜ごと | 「ごと」は接尾語 |
に | 格助詞 |
過ぎ | ガ行上二段活用「すぐ」の連用形 |
ぬれ | 完了の助動詞「ぬ」の已然形 |
ば | 接続助詞 |
頼ま | マ行四段活用「たのむ」の未然形 |
ぬ | 打消の助動詞「ず」の連体形 |
ものの | 接続助詞 |
恋ひ | ハ行上二段活用「こふ」の連用形 |
つつ | 接続助詞 |
ぞ | 係助詞 |
経る | ハ行下二段 活用「ふ」の連体形 |