大鏡『弓争ひ』原文・現代語訳と解説
このテキストでは、
大鏡の一節「
弓争ひ」(
世間の光にておはします〜)のわかりやすい現代語訳・口語訳とその解説をしています。書籍によっては、「
競べ弓」、「
南院の競射」「
道長と伊周」などと題されているものもあるようです。
大鏡とは
大鏡は平安時代後期に成立したとされる歴史物語です。
藤原道長の栄華を中心に、宮廷の歴史が描かれています。
原文(本文)
世間の光にて
おはします殿の、一年ばかり、ものを
安からず
思し召したりしよ。いかに
天道御覧じけむ。
さりながらも、いささか逼気し、御心
やは倒させ給へりし。朝廷ざまの公事・作法ばかりにはあるべきほどに
ふるまひ、時
違ふことなく
勤めさせ給ひて、内々には、所も置き
聞こえさせ給はざりしぞかし。
※つづき:
大鏡「弓争ひ」(帥殿の、南院にて〜)の現代語訳と解説
現代語訳(口語訳)
世間の光でいらっしゃる殿(藤原道長)が、一年ほど、(伊周に出世が遅れて)心中平穏でなくお思いでいらっしゃいましたことです。どのように(そのご様子を)天帝はご覧になっていたのでしょうか。しかしながら(道長はそういう状況下であっても)、少しも卑屈になったり、くじけることがあったでしょうか。(いや、ありませんでした。)朝廷での行事や儀式だけは、身分相応に振るまい、時間を間違えることなくお勤めになられましたが、私生活では、全くご遠慮申し上げることはありませんでした。
品詞分解
※品詞分解
大鏡『弓争ひ(世間の光にておはします〜)』の品詞分解
単語・文法解説
天道 | 天帝。自然界を支配する神 |
さりながら | しかしながら |
やは | 反語を表す係助詞。「や」が変形している |
聞こゆ | 補助動詞の聞こゆなので、ここでは「申し上げる」と訳している |
関連テキスト
・大鏡『
競べ弓』
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・大鏡『
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著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。