やすし/安し/易し
このテキストでは、ク活用の形容詞「
やすし/安し/易し」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「やすし」には
①安し
②易し
③補助形容詞
の用法があり、それぞれ意味が異なる。
形容詞・ク活用
未然形 | やすく | やすから |
連用形 | やすく | やすかり |
終止形 | やすし | ◯ |
連体形 | やすき | やすかる |
已然形 | やすけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | やすかれ |
①安し
■意味1
心安らかである、穏やかである。
[出典]:
桐壷 源氏物語
「同じほど、それより下臈の更衣たちは、まして
安からず。」
[訳]:同じ身分、それよりも下の身分の更衣たちは、なおさら
心安らかではありません。
■意味2
軽々しい、気軽である。
[出典]:玉鬘 源氏物語
「この身はいと安くはべり。」
[訳]:この私には大変気軽でございます。
②易し
■意味1
容易である、簡単である。
[出典]:
高名の木登り 徒然草
「過ちは、
やすきところになりて、必ずつかまつることに候ふ。」
[訳]:失敗は、
簡単なところになって、必ず起こるものでございます。
■意味2
無造作である。
[出典]:寺院の号 徒然草
「ただありのままに、やすく付けけるなり。」
[訳]:ただありのままに、無造作に付けたものです。
③補助形容詞
■意味
容易に〜できる、〜しがちである。
※この用法の場合、動詞の連用形に付いて用いられる。
[出典]:
にくきもの 枕草子
「あなづり
やすき人ならば、『後に』とても、やりつべけれど...」
[訳]:
容易に見下げることが
できる人ならば、「後で。」と言って、帰してしまうことができそうですが...