歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解
このテキストでは、
新古今和歌集に収録されている歌「
昔思ふ草の庵の夜の雨に涙な添へそ山郭公」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説(体言止め、倒置など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。
新古今和歌集とは
新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)は、鎌倉時代初期に編纂された勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)です。勅撰和歌集とは、天皇や上皇の命令により編集された和歌集のことです。
原文
昔思ふ 草の庵の 夜の雨に 涙な添へそ 山郭公
ひらがなでの読み方
むかしおもふ くさのいほりの よるのあめに なみだなそへそ やまほととぎす
現代語訳(口語訳)
昔を思いながら暮らす草案に降る雨の夜に、涙を添えないでおくれ山ほととぎすよ。
【異訳】
昔の優雅な暮らしを思い出して寂しくしているこの草庵に雨が降っている。山で鳴くほととぎすよ、悲しい鳴き声で、さらに私に涙の雨まで降らそうとさせないでおくれ。
解説・鑑賞のしかた
歌の詠み手は、平安時代後期から鎌倉時代初期の公家・歌人
藤原俊成(ふじわら の としなり/しゅんぜい)です。藤原道長の玄孫、藤原定家の父で、千載和歌集の撰者としても知られます。
この歌は、白居易が詠んだ「
蘭省の花の時錦帳の下、廬山の雨の夜草庵の中」を典拠とし、自身の現在の生活を掛け合わせて詠んだものです。藤原俊成はこの歌を詠む数年前には出家して第一線から退いています。退官前の華やかな生活を思い出しながら現在の侘しさを詠みあげた歌と言っていいでしょう。侘しい草庵に雨が降り注ぐ叙景に山ほととぎすの悲しい鳴き声をあわせることで、感傷的な雰囲気を作り出しています。
藤原俊成は平安時代末期の歌檀の大家でもあり、平清盛の異母弟である平忠度も弟子の1人でした。平忠度との絆を感じさせるエピソードが平家物語に描かれています。
平家物語『忠度の都落ち』の現代語訳
主な技法・単語・文法解説
■単語
| 昔思ふ | 過去の、優雅な暮らしの生活のことを、今は草庵の中で思いだしているということで、感傷的な意味合いをかもしだしている |
| 夜の雨に | ここで降っている雨は五月雨 |
| 涙なそへそ | 「な~そ」で「~しないでくれ」と訳す。山ほとぎすの悲しみを誘う鳴き声で、涙(という雨)が出そうなので、そうさせないでくれという意味 |
■体言止め・倒置
この句には体言止めの技法が用いられている。また、第四句(涙を添えてくれるな)と結句(ほととぎすよ)が倒置となっている。
品詞分解
※名詞は省略しています。
| 昔 | ー |
| 思ふ | ハ行四段活用・連体形 |
| 草 | ー |
| の | 格助詞 |
| 庵 | ー |
| の | 格助詞 |
| 夜 | ー |
| の | 格助詞 |
| 雨 | ー |
| に | 格助詞 |
| 涙 | ー |
| な | 副詞 |
| そへ | ハ行下二段活用・連用形 |
| そ | 終助詞 |
| 山郭公 | ー |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。