『雪のいと高う降りたるを』
このテキストでは、
枕草子の一節「
雪のいと高う降りたるを」の原文、現代語訳(口語訳)とその解説を記しています。 書籍によっては「
香炉峰の雪」と題するものもあるようです。
※
枕草子は
清少納言によって書かれたとされる随筆です。
清少納言は平安時代中期の作家・歌人で、一条天皇の皇后であった中宮定子に仕えました。ちなみに
枕草子は、
兼好法師の『
徒然草』、
鴨長明の『
方丈記』と並んで「
古典日本三大随筆」と言われています。
原文
雪のいと
(※1)高う降りたるを例ならず御格子
まゐりて、
(※2)炭櫃に火おこして、
物語などして集まりさぶらうに、
と
仰せらるれば、御格子
上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑は
(※4)せたまふ。
人々も
「
(※5)さることは
知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそよらざりつれ。なほ、
(※6)この官の人にはさべきなめり。」
と言ふ。
【「白眉」は「しろまゆ?」正しい読み方と意味を解説】
現代語訳
雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもと違って御格子をお下げ申し上げて、火鉢に火をおこして、皆で話などをして集まってお仕え申し上げていると、(中宮定子様が、)
「清少納言よ。香炉峰の雪はどうであろうか。」
とおっしゃるので、(私は人に命じて)御格子を上げさせて、御簾を高く上げたところ、(中宮定子様は)お笑いになります。
(周りにいた他の)女房も、
「そのようなこと(香炉峰の雪のこと)は知っておりますし、歌などに詠むことまでありますが、(このように御簾を上げようとまでは)思いつきませんでした。(あなたは)やはり、この中宮のお側につく人にふさわしい人のようです。」
と言っています。
この話をより理解するための味わいどころ
まず、枕草子の筆者である清少納言は、
藤原定子(以後定子)という中宮の位にあった女性に仕えていたということを覚えておきましょう。この定子は、枕草子の中に何度も登場してきます。
このストーリーは、定子を囲んで皆でお話をしていたときのことです。定子は清少納言の知識を試すために、「香炉峰の雪はどうなっているだろうか?」と質問をします。この香炉峰とは、中国の詩人
白居易の詠んだ歌に出てくる山のことで、『
香炉峰に積もった雪を、御簾を上げて眺める』という描写がされています。この一文を踏まえて清少納言は、部屋から見える山を香炉峰に見立てようと、下りていた御簾を上げさせたというわけです。
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