あぐ/上ぐ/挙ぐ/揚ぐ
このテキストでは、ガ行下二段活用の動詞「
あぐ/上ぐ/挙ぐ/揚ぐ」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
ガ行下二段活用
未然形 | あげ |
連用形 | あげ |
終止形 | あぐ |
連体形 | あぐる |
已然形 | あぐれ |
命令形 | あげよ |
■意味1:他動詞
(下から上に)
上げる。
[出典]:
雪のいと高う降りたるを 枕草子
「『少納言よ、香炉峰の雪いかならむ。』と仰せらるれば、御格子
上げさせて、御簾を高く
上げたれば...」
[訳]:「清少納言よ、香炉峰の雪はどうなっているだろうか。」とおっしゃるので、(私は人に命じて)御格子を
上げさせて、御簾を高く
上げたところ...
■意味2:他動詞
髪を結い上げる、髪上げをする。
[出典]:
筒井筒 伊勢物語
「くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれか
あぐべき」
[訳]:(あなたと長さを)比べ合ってきた私の振り分け髪も、(長くなって)肩を過ぎました。あなた以外の誰のためにこの
髪を結い上げましょうか。
■意味3:他動詞
(都や身分の高い人の元へ)
行かせる。
[出典]:
門出・東路の道の果て 更級日記
「京にとく
上げたまひて、物語の多く候ふなる、ある限り見せたまへ。」
[訳]:(私を)都に早く
上らせてくださって、たくさんあると聞く物語を、この世にある限りお見せくださいませ。
■意味4:他動詞
(声や調子を)
大きくする、高める。
[出典]:
宇治川先陣 平家物語
「佐々木、鐙踏んばり立ち上がり、大音声を
あげて名のりけるは...」
[訳]:佐々木高綱は、鐙に踏ん張り立って、大声を
あげて名乗ったことには...
■意味5:他動詞
名声を誇る、評判を得る。
※この用法の場合、「名を上ぐ」などの形で用いられる。
[出典]:五節之沙汰 平家物語
「後代に名をあげたりし者にて候ふ。」
[訳]:後の世まで名声を誇っていた者でございます。
■意味6:他動詞
終了する、乗馬で乗り納めをする。
[出典]:伊尹 大鏡
「おもしろく上げたまへば、御気色直りて...」
[訳]:(馬を)見事に乗り納めなさると、(花山院の)ご機嫌も直って...
■意味7:他動詞
差し上げる、奉納する。
[出典]:鶴の林 栄花物語
「経一偈をあげさせ給ひて...」
[訳]:偈(お経の一種)を奉納なさって...
■意味8:他動詞
昇格させる。
[出典]:夜の寝覚
「弁少将を右大将にあげて...」
[訳]:弁少将を右大将に昇格させて...