伊勢物語『東下り・駿河国』
このテキストでは、
伊勢物語の9段「東下り・駿河国」の「行き行きて、駿河の国にいたりぬ〜」から始まる部分の現代語訳・口語訳とその解説をしています。
※前回:
三河国編「昔、男ありけり。その男〜」の現代語訳
※伊勢物語は平安時代初期に書かれた歌物語です。作者は未詳ですが、
在原業平がモデルではないかと言われています。
原文(本文)
行き行きて、駿河の国に
いたりぬ。宇津の山にいたりて、わが入らむとする道はいと
(※1)暗う細きに、つたかえでは茂り、
物心ぼそく、
すずろなるめを
見ることと思ふに、修行者
あひたり。
といふを見れば、
(※1)見し人なりけり。京に、その人の御もとにとて、文書きて
(※2)つく。
富士の山を見れば、五月の
つごもりに、雪いと
(※3)白う降れり。
その山は、ここに
たとへば、比叡の山を二十ばかり重ねあげたらんほどして、
(※4)なりは
(※5)塩尻のやうになんありける。
※つづき:
すみだ河編「なほ行き行きて、武蔵の国と〜」の現代語訳
現代語訳
さらに行き進んで駿河の国に着きました。宇津の山について、(これから)自分が入ろうとする道は、とても暗く細く、(おまけに)つたや楓が茂っていたので、なんとなく心細く、(この道を行くと)思いがけない目に遭うのだろうと思っていたところ、修行者に出会いました。
「このような道を、どうしていらっしゃるのですか。」
と言うのを見ると、以前会ったことのある人でした。(そこで)京に(いる)、あの人のもとに(届けてほしい)と、手紙を書いて(修行者に)託します。
駿河にある宇津の山のほとり(に来ていますが)、(その「うつ」という名のように)現実でも夢の中でも(あなたに)逢わないことですよ。
※歌の解説
富士山を見ると、五月の下旬(だというの)に、雪がとても白く降り積もっています。
季節をわきまえない山は富士の山です。(五月末なのに)今をいつだと思って、子鹿のまだら模様のように雪が降り積もるのでしょうか。
※歌の解説
その山は、ここ(都)で例えるならば、比叡山を20ぐらいに重ね上げたであろうほど(の高さ)で、形は塩尻のようでした。
※つづき:
すみだ河編「なほ行き行きて、武蔵の国と〜」の現代語訳
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