本文をあらすじにまとめました
京都に戻ってこれて嬉しい。自宅の門に入ると、月の光が明るいので、家の様子がよく見える。聞いていた以上に家が荒れているが、家の管理を任せた隣人の心も荒れていたのであろう。隣人が自ら進んで管理を引き受けてくれたのではあるが、機会のあるごとにお礼の品を送っていたのにもかかわらず...薄情だとは思うが、お礼の贈り物はしようと思う。
さて、庭に生えた松の木は、1000年も時が過ぎてしまったかと思うほど変わり果てていた。松だけではなく大部分が荒れ果ててしまっているので、それを見た人々も「あぁ、なんということだろうか。」と口にしている。
この家での出来事について思い出さないことはない。昔を思い恋しく感じることの中でも、この家で産まれた娘が土佐で死んでしまったため、一緒に帰ってこれなかったことがどれほど悲しいことか。土佐から一緒に帰ってきた人たちの所には、子どもが集まって団らんをしている。こうしているうちによりいっそう悲しみがこみ上げ、妻と和歌を詠んだ。
(この家で)生まれた子でさえも帰ってこないというのに、(留守の間に)我が家に生えた小さい松が(育って)いるのを見るのは悲しいことだよ。
これだけでは詠み足りず、次のように詠んだ。
以前会ったことのある人(亡くなった娘)が、松が1000年生きるように(生き長らえてその様子を)見る(ことができるの)ならば、遠く(土佐で)悲しい別れなどしただろうか、いや、せずにすんだろうに。
忘れがたく残念なことも多いが、書きつくすことはできない。とにもかくにも、こんな日記は早く破り捨ててしまおう。
品詞分解
※品詞分解:
土佐日記『帰京』の品詞分解
単語
| (※1)ぞ~たる | 「ぞ~たる」で係り結びとなり、強調の意味。「ぞ」に続くのは連体形 |
| (※2)や~けむ | 「や~けむ」で係り結びとなり、疑問の意味。「けむ」は「過去の原因推量」を表す助動詞の連体形 |
| (※3)船人 | 一緒に船にのって帰京した人たち |
| (※4)心知れる人 | 紀貫之のお供をした人たちの家族は京に残っていたので、貫之の娘が死んだことを知らずに、「お父さんお帰りー」と騒いでいる。この辛さを知っているのは妻だけ |
| (※5)ましかば~まし | 「〜ましかば〜まし」で反実仮想を表し、「もし〜だったら〜だっただろうに」と訳す。 |
練習問題にチャレンジ!
土佐日記『帰京』テストで出題されそうな問題
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著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。