百人一首(85)俊恵法師/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解
夜もすがら もの思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
夜もすがらもの思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり」の現代語訳・口語訳と解説(句切れの有無など)、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、
千載和歌集にも収録されていますが、千載和歌集では以下のようになっています。
夜もすがら もの思ふころは 明けやらぬ 閨のひまさへ つれなかりけり
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。
原文
(※1)夜もすがら もの思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり
ひらがなでの読み方
よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
現代語訳
一晩中物思いにふけっていると(なかなか)夜が明けないので、(いつまでも朝日が射し込まない)寝室の(板戸の)隙間までもが薄情に思えることです。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、平安時代末期の僧侶・歌人
俊恵法師(しゅんえほうし)です。祖父の
源俊頼、父の
源経信と3世代続けて百人一首に歌が選ばれています。自ら歌のサロンを開き、歌壇を活気づけました。
方丈記で有名な
鴨長明も俊恵法師の弟子の一人です。
詞書によるとこの歌は、「恋の歌」をお題にして詠んだものとされています。
恋の悩みで眠ることができず物思いにふけっています。マクベスの一節に、「明けない夜はない」とは言いますが、実際にはなかなか夜が明けず、朝日の射し込んでこない寝室の扉の隙間ですら、薄情に思えてくることです。
恋の悩みゆえに眠ることができず、ただ時間だけがゆっくりと過ぎていく、そのような経験をしたことのある方も多いのではないでしょうか。
主な技法・単語・文法解説
■単語
■句切れ
句切れなし。
品詞分解
※名詞は省略しています。
夜もすがら | ー |
もの思ふ | ハ行四段活用「ものおもふ」の連体形 |
ころ | ー |
は | 係助詞 |
明けやら | ラ行四段活用「あけやる」の未然形 |
で | せつぞくじょ |
閨 | ー |
の | 格助詞 |
ひま | ー |
さへ | 副助詞 |
つれなかり | ク活用の形容詞「つれなし」の連用形 |
けり | 詠嘆の助動詞「けり」の終止形 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。