宇治拾遺物語『検非違使忠明のこと』の品詞分解
このテキストでは、
宇治拾遺物語の一節、『
検非違使忠明のこと・けびいしただあきらのこと』(これも今は昔、忠明といふ検非違使ありけり〜) の品詞分解を記しています。
この話は今昔物語集にも収録されていますが、宇治拾遺物語のものとは若干、内容が異なります。また、書籍によっては「検非違使忠明」と題するものもあるようです。
※品詞分解:
今昔物語集ver.『検非違使忠明』の品詞分解
※現代語訳:
宇治拾遺物語『検非違使忠明のこと』(これも今は昔、忠明といふ〜)
宇治拾遺物語とは
宇治拾遺物語は13世紀前半ごろに成立した説話物語集です。編者は未詳です。
品詞分解
※名詞は省略しています。
■これも今は昔、忠明といふ検非違使ありけり。それが若かりける時、清水の橋のもとにて京童部どもといさかひをしけり。
これ | ー |
も | 係助詞 |
今 | ー |
は | 係助詞 |
昔、 | ー |
忠明 | ー |
と | 格助詞 |
いふ | ハ行四段活用「いふ」の連体形 |
検非違使 | ー |
あり | ラ行変格活用「あり」の連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
それ | 代名詞 |
が | 格助詞 |
若かり | 形容詞・ク活用「わかし」の連用形 |
ける | 過去の助動詞「けり」の連体形 |
時、 | ー |
清水 | ー |
の | 格助詞 |
橋 | ー |
の | 格助詞 |
もと | ー |
にて、 | 副助詞 |
京童部ども | ー |
と | 格助詞 |
いさかひ | ー |
を | 格助詞 |
し | サ行変格活用「す」の連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
■京童部、手ごとに刀を抜きて、忠明を立てこめて殺さむとしければ、忠明も太刀を抜きて、御堂ざまに上るに、
京童部 | ー |
手ごと | ー |
に | 格助詞 |
刀 | ー |
を | 格助詞 |
抜き | カ行四段活用「ぬく」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
忠明 | ー |
を | 格助詞 |
立てこめ | マ行下二段活用「たてこむ」の連用形 |
て | 接続助詞 |
殺さ | サ行四段活用「ころす」の未然形 |
む | 意志の助動詞「む」の終止形 |
と | 格助詞 |
し | サ行変格活用「す」の連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」の已然形 |
ば、 | 接続助詞 |
忠明 | ー |
も | 係助詞 |
太刀 | ー |
を | 格助詞 |
抜き | カ行四段活用「ぬく」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
御堂ざま | ー |
に | 格助詞 |
上る | ラ行四段活用「のぼる」の連体形 |
に、 | 接続助詞 |
■御堂の東のつまにも、あまた立ちて向かひ合ひたれば、内へ逃げて、蔀のもとを脇に挟みて前の谷へ躍り落つ。
御堂 | ー |
の | 格助詞 |
東 | ー |
の | 格助詞 |
つま | ー |
に | 格助詞 |
も、 | 係助詞 |
あまた | 副詞 |
立ち | タ行四段活用「たつ」の連用形 |
て | 接続助詞 |
向かひ合ひ | ハ行四段活用「むかひあふ」の連用形 |
たれ | 過去の助動詞「たり」の已然形 |
ば、 | 接続助詞 |
内 | ー |
へ | 格助詞 |
逃げ | ガ行下二段活用「にぐ」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
蔀 | ー |
の | 格助詞 |
もと | ー |
を | 格助詞 |
脇 | ー |
に | 格助詞 |
挟み | マ行四段活用「はさむ」の連用形 |
て | 接続助詞 |
前 | ー |
の | 格助詞 |
谷 | ー |
へ | 格助詞 |
躍り落つ。 | タ行上二段活用「をどりおつ」の終止形 |
■蔀、風にしぶかれて、谷の底に、鳥の居るやうに、やをら落ちにければ、それより逃げて往にけり。
蔀、 | ー |
風 | ー |
に | 格助詞 |
しぶか | カ行四段活用「しぶく」の未然形 |
れ | 受身の助動詞「る」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
谷 | ー |
の | 格助詞 |
底 | ー |
に、 | 格助詞 |
鳥 | ー |
の | 格助詞 |
居る | ワ行上一段活用「ゐる」の連体形 |
やうに、 | 比況の助動詞「やうなり」の連用形 |
やをら | 副詞 |
落ち | タ行上二段活用「おつ」の連用形 |
に | 完了の助動詞「ぬ」の連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」の已然形 |
ば、 | 接続助詞 |
それ | 代名詞 |
より | 格助詞 |
逃げ | ガ行下二段活用「にぐ」の連用形 |
て | 接続助詞 |
往に | ナ行変格活用「いぬ」の連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
■京童部ども谷を見おろして、あさましがり、立ち並みて見けれども、すべきやうもなくて、やみにけりとなむ。
京童部ども、 | ー |
谷 | ー |
を | 格助詞 |
見下ろし | サ行四段活用「みおろす」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
あさましがり、 | ラ行四段活用「あさましがる」の連用形 |
立ち並み | マ行四段活用「たちなむ」の連用形 |
て | 接続助詞 |
見 | マ行上一段活用「みる」の連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」の已然形 |
ども、 | 接続助詞 |
す | サ行変格活用「す」の終止形 |
べき | 可能の助動詞「べし」の連体形 |
やう | ー |
も | 係助詞 |
なく | 形容詞・ク活用「なし」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
やみ | マ行四段活用「やむ」の連用形 |
に | 完了の助動詞「ぬ」の連用形 |
けり | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
と | 格助詞 |
なむ。 | 係助詞 |
※現代語訳:
宇治拾遺物語『検非違使忠明のこと』(これも今は昔、忠明といふ〜)
関連テキスト
・宇治拾遺物語『
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・宇治拾遺物語『
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・宇治拾遺物語『
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・宇治拾遺物語『
袴垂、保昌に会ふこと(袴垂と保昌』
・宇治拾遺物語『
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・宇治拾遺物語『
歌詠みて罪を許さるること』
・宇治拾遺物語『
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・宇治拾遺物語『
尼、地蔵を見奉ること』
・宇治拾遺物語『
虎の鰐取りたること』