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奥の細道『草加』(ことし元禄二年にや〜)のわかりやすい現代語訳と解説
著作名: 走るメロス
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おくの細道『草加』現代語訳をわかりやすく解説

このテキストでは、奥の細道の一節『草加』(ことし元禄二年にや〜)の現代語訳・口語訳とその解説を記しています。



奥の細道とは

「月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり。」で始まる一節で広く知られている奥の細道は、松尾芭蕉によって書かれました。江戸を出発し、東北地方、北陸地方を巡り岐阜の大垣までの道中の出来事を記した紀行文です。


原文

ことし元禄二年(※1)にや、奥羽長途の行脚只かりそめに思ひ立ちて、(※2)呉天に白髪の恨みを重ぬいへども、耳にふれていまだ目にぬ境、もし生きて帰らばと、定めなき頼みの末をかけ、その日やうやう草加といふ宿にたどり着きにけり。(※3)痩骨の肩にかかれる物先づ苦しむ。只身すがらにと出で立ち侍るを、(※4)紙子一衣は夜の防ぎ、浴衣・雨具・墨・筆のたぐひ、あるはさりがたき餞などしたるは、さすがにうち捨てがたくて、路次の煩ひとなれるこそわりなけれ



現代語訳(口語訳)

今年は元禄二年であろうか。奥羽への長い道のりの旅をただふと思いついて、遠い異郷の旅の空(の下)で白髪になってしまうような嘆きを重ねたとしても、話には聞いてもまだ見たことのない場所(を見て)、もし生きて帰ることができたら(幸いだ)と、はかない望みをあてにして、その日、やっとのことで草加という宿にたどり着いた。やせ細った肩にかかる荷物(の重さ)がまず(私を)苦しめる。ただ身ひとつでと出発するのですが、紙子一衣は夜(の寒さ)を防ぐために、浴衣、雨具、墨、筆など、または断りきれない餞別などをしてくれたのは、そうはいってもやはりなかなか捨てるわけにもいかず、道中の悩みの種となっていることはどうしようもないことだ。

品詞分解

おくのほそ道『草加』(ことし元禄二年にや〜)の品詞分解

単語・解説

(※1)にや断定の助動詞「なり」の連用形「に」+係助詞「や」で「~であろうか」という意味。「あらん」が省略されている。
(※2)呉天遠い異郷の空
(※3)痩骨やせ細っている様子、またはその体
(※4)紙子「かみこ」和紙で作った防寒服


関連テキスト

・奥の細道『旅立ち・序文・漂泊の思ひ

・奥の細道『草加

・奥の細道『那須野

・奥の細道『白河の関

・奥の細道『平泉

・奥の細道『立石寺

・奥の細道『最上川

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著者情報:走るメロスはこんな人

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。

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