「ひとまには参りつつ額をつきし薬師仏」の現代語訳・口語訳・意味・品詞分解
原文
日の
入り際の、いと
すごく霧り渡りたるに、車に乗るとて
うち見やりたれば、
ひとまには参りつつ額をつきし薬師仏の立ちたまへるを、
見捨てたてまつる悲しくて、人知れず
うち泣かれぬ。
現代語訳・口語訳・意味
日がちょうど沈むときで、とても物寂しく霧が一面にたちこめているときに、牛車に乗るということで(家の方に)目を向けたところ、
人目のないときに何度もお参りしては、額をついてお祈りしていた薬師仏が(残されて)立っていらっしゃるのを、お見捨て申し上げることが悲しくて、人知れず自然と泣けてくるのであった。
品詞分解
| 人ま | 名詞 |
| に | 格助詞 |
| は | 係助詞 |
| 参り | 謙譲語・ラ行四段活用「まゐる」の連用形 |
| つつ | 接続助詞 |
| 額 | 名詞 |
| を | 格助詞 |
| つき | カ行四段活用「つく」の連用形 |
| し | 過去の助動詞「き」の連体形 |
| 薬師仏 | 名詞 |
主な出典
【更級日記「門出・あこがれ」】
年ごろ遊び慣れつる所を、あらはにこほち散らして、立ち騒ぎて、日の入り際の、いとすごく霧り渡りたるに、車に乗るとてうち見やりたれば、ひとまには参りつつ額をつきし薬師仏の立ちたまへるを、見捨てたてまつる悲しくて、人知れずうち泣かれぬ。