百人一首(86)西行法師/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
なげけとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
なげけとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな」の現代語訳・口語訳と解説(係り結び、句切れなど)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、
千載和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
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暗記に役立つ百人一首一覧
原文
なげけとて 月やは物を 思はする (※1)かこち顔なる わが涙かな
ひらがなでの読み方
なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな
現代語訳
「悲しみに泣きなさい」と月が(私に)物思いをさせるのでしょうか。(いや、そうではないのに)月のせいだというように(こぼれる)私の涙であることですよ。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての武士、僧侶、歌人であった
西行法師(さいぎょうほうし)です。
詞書によるとこの歌は、「月前の恋」という題で詠まれたものです。当時の歌壇に多大なる影響を与えていた西行の歌は、心から染み出てくる感情をたんたんと、控えめに表現したものが多いです。技巧をこらしたり、強いメッセージを含めたりといったものとは対照的なものです。
「月を眺めていたら切なくて涙が出てきた。それは恋の悩みのせいであるのにまるで月が悲しめと言っているようだ。」
主な技法・単語・文法解説
■単語
(※1)かこち顔なる | ここでは「~のせいだというように」と訳す |
■句切れ
三句切れ。
品詞分解
※名詞は省略しています。
なげけ | カ行四段活用「なげく」の命令形 |
と | 格助詞 |
て | 接続助詞 |
月 | ー |
やは | 係助詞・係り結び |
物 | ー |
を | 格助詞 |
思は | ハ行四段活用「おもふ」の未然形 |
する | 私益の助動詞「す」の連体形・係り結び |
かこち顔なる | ナリ活用の形容動詞「かこちがほなり」の連体形 |
わ | 代名詞 |
が | 格助詞 |
涙 | ー |
かな | 終助詞 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。