『初草の生ひゆく末も知らぬ間にいかでか露の消えむとすらむ』現代語訳と解説
このテキストでは、
源氏物語の一節「
若紫」で詠まれている歌「
初草の生ひゆく末も知らぬ間にいかでか露の消えむとすらむ」のわかりやすい現代語訳・口語訳、解説とその品詞分解を記しています。
源氏物語とは
源氏物語は平安中期に成立した長編小説です。一条天皇中宮の藤原彰子に仕えた
紫式部を作者とするのが通説です。
原文
初草の生ひゆく末も知らぬ間にいかでか露の消えむとすらむ
ひらがなでの読み方
はつくさのおひゆくすえもしらぬまに いかでかつゆのきえむとすらむ
現代語訳
萌え出したばかりの若草が成長していく将来もわからないうちに、どうして露は消えようとするのでしょうか。
解説
少女の世話役である尼が詠んだ「
生ひ立たむありかも知らぬ若草をおくらす露ぞ消えむそらなき」という歌を聞いてもらい泣きした女房が詠んだ歌。「初草」は少女を、「露」は今日明日の命かもしれない尼君のことを指している。
単語・文法
初草 | 幼い子どもを指す例えとして用いられるが、ここでは若紫に登場する少女のことを指している |
生ひゆく | カ行四段活用「生ひゆく」の連体形。成長していく、大きくなる |
露 | 少女の世話役である尼君のことを指している |
消え | ヤ行下二段活用「きゆ」の未然形。消えてなくなる、死ぬ |
品詞分解
※名詞は省略しています。
初草 | ー |
の | 格助詞 |
生ひゆく | カ行四段活用・連体形 |
末 | ー |
も | 係助詞 |
知ら | ラ行四段活用・未然形 |
ぬ | 打消の助動詞・連体形 |
間 | ー |
に | 格助詞 |
いかで | 副詞 |
か | 係助詞 |
露 | ー |
の | 格助詞 |
消え | ヤ行下二段活用・未然形 |
む | 意志の助動詞・連体形 |
と | 格助詞 |
す | サ行変格活用・終止形 |
らむ | 現在推量の助動詞・連体形 |
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著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。