かつ
このテキストでは、古文単語「
かつ」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
※「かつ」は
①副詞
②接続詞
としての用法がある。
①副詞
■意味1
一方では。
[出典]:
ゆく河の流れ 方丈記
「よどみに浮かぶうたかたは、
かつ消え
かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。」
[訳]:(河の流れの)よどみに浮かんでいる水の泡は、
一方では(形が)消え(てなくなり)
一方では(形が)できたりして、長い間(そのままの状態で)とどまっている例はない。
■意味2
すぐに、次から次へと。
[出典]:
をりふしの移り変わるこそ 徒然草
「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざなれば、筆にまかせつつ、あぢきなきすさびにて、
かつ破り捨つべきものなれば、人の見るべきにもあらず。」
[訳]:こうあって欲しいと思うことを口にしないのは(お腹が膨れるような)気持ちが悪いことなので、(この文章は)筆の(勢い)にまかせながら(書いた)、つまらない気慰みで、(書いては)
すぐに破り捨てるべきものだから、人が見るようなものでもない。
■意味3
わずかに、ちょっと。
[出典]:明石 源氏物語
「かつ見るにだに飽かぬ御さまを、『いかで隔てつる年月ぞ』とあさましきまで思ほすに...」
[訳]:ちょっと目にするだけでは満足できないご様子ですが、「どうして長い間会わずにいられたのだろうか。」と、あきれるほどお思いになるにつけても...
■意味4
(「見る/聞く/知る」などの上について)
すでに、あらかじめ。
[出典]:万葉集 大伴家持
「世の中し常かくのみとかつ知れど痛き心は忍びかねつも」
[訳]:世の中は常にこのようなことばかりだとすでに知ってはいるが、つらい気持ちは堪えがたいものだ。
②接続詞
■意味
そのうえ、それに加えて。
※この用法が用いられるのは、近世以降の作品。
[出典]:宮城野 奥の細道
「猶、松島・塩がまの所々画に書きて送る。且、紺の染緒つけたる草鞋二足餞す。」
[訳]:それから(加右衛門は)松島や塩釜のあちらこちら絵に描いて、送ってくれる。そのうえ紺色の染緒のついた草鞋二足を餞別としてくれる。