あさまし
このテキストでは、シク活用の形容詞「
あさまし」の意味、活用、解説とその使用例を記しています。
形容詞・シク活用
未然形 | あさましく | あさましから |
連用形 | あさましく | あさましかり |
終止形 | あさまし | ◯ |
連体形 | あさましき | あさましかる |
已然形 | あさましけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | あさましかれ |
■意味1
驚きあきれることだ、意外だ。
[出典]:
大江山 十訓抄
「思はずに
あさましくて、 「こはいかに、かかるやうやはある。」とばかり言ひて、返歌にも及ばず...」
[訳]:思いがけないことで
驚きあきれて、「これはどうしたことか、こんなことがあるものか。」とだけ言って、返歌もできずに...
[出典]:
蓬莱の玉の枝 竹取物語
「かく
あさましくて持てきたることをねたく思ひ...」
[訳]:このように
意外にも(玉の枝を)持ってきたことをいまいましく思い...
■意味2
情けない、嘆かわしい、興ざめである。
[出典]:
ふと心劣りとかするものは 枕草子
「わがもてつけたるを、つつみなく言ひたるは、
あさましきわざなり。」
[訳]:自分の身にしみている言葉を、はばかることなく言うことは、
情けないものです。
[出典]:
養和の飢饉 方丈記
「二年が間、世の中飢渇して、
あさましきこと侍りき。」
[訳]:二年の間、世の中では食料が欠乏して、
嘆かわしいことがありました。
■意味3
見苦しい、みっともない。
[出典]:徒然草 兼好法師
「後日に、むく犬のあさましく老いさらぼひて、毛はげたるを引かせて...」
[訳]:後日に、むく犬でみっともなく年老いてやせこけて、毛が抜け落ちているのを(使用人に)引かせて...
■意味4
みすぼらしい、みじめである。
[出典]:雨月物語 上田秋成
「親もなき身のあさましくてあるを、いとかなしく思ひて...」
[訳]:親もない身の上でみじめなありさまだったのを、たいそうかわいそうに思って...
■意味5
(あさましくなるの形で)
亡くなる。
[出典]:増鏡
「三月二十日、つひにいとあさましくならせ給ひぬ。」
[訳]:三月二十日、ついにお亡くなりになられた。
■意味6
ひどく、たいへん。
[出典]:徒然草 兼好法師
「下様の人は、罵り合ひいさかひて、あさましく恐ろし。」
[訳]:身分の低い者は、罵り合い言い争って、ひどく恐ろしい。
■備考
現代語では「情けない、見苦しい」のようにネガティブな意味で用いられるが、古語の「あさまし」は、良い意味でも悪い意味でも用いられる。
■あさましう
「あさましう」は「あさまし」の連用形のウ音便。