百人一首(7)安倍仲麿/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし 月かも
このテキストでは、
(小倉)百人一首に収録されている歌「
天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」の現代語訳・口語訳と解説(句切れの有無など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、
古今和歌集にも収録されています。また、
紀貫之が書いた
土佐日記にも
引用されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
古今和歌集とは
古今和歌集(こきんわかしゅう)は、平安時代前期の勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)です。勅撰和歌集とは、天皇や上皇の命令により編集された和歌集のことです。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
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暗記に役立つ百人一首一覧
原文
天の原 振りさけ見れば (※1)春日なる (※2)三笠の山に出でし月かも
ひらがなでの読み方
あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
現代語訳(口語訳)
広々とした空をはるかに仰ぎ見ると、(私のふるさとの)春日にある三笠の山の上に出る月(と同じ月)であることよ。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、
阿倍仲麻呂(あべ の なかまろ)です。百人一首では
安倍仲麿(あべ の なかまろ)と表記されます。遣唐使として派遣された阿倍仲麻呂が、唐から日本に帰るときに詠んだ歌です。
船の乗り場であちらの国の人々が、仲麻呂の送別会をして別れを惜しんで、漢詩を作ったりしていました。彼らはそれに飽き足らなかったのでしょうか、送別会は満月が出るまで行われました。月は海から出てきたのですが、この海を天上界(天の原)と例え、上った月の情景を表現した歌です。
阿倍仲麻呂が乗った船は出航したものの、難破により帰国することは叶わず、唐で没しました。
主な技法・単語・文法解説
■単語
(※1)春日なる | 「春日にある」の意。春日とは、今の奈良県奈良市 |
(※2)三笠の山 | 奈良市の春日神社あたりにある山 |
■句切れ
句切れなし。
■品詞分解
※名詞は省略しています。
天の原 | ー |
振りさけ見れ | マ行上一段活用「ふりさけみる」の已然形 |
ば | 接続助詞 |
春日 | ー |
なる | 存在の助動詞「なり」の連体形 |
三笠の山 | ー |
に | 格助詞 |
出で | ダ行下二段活用「いづ」の連用形 |
し | 過去の助動詞「き」の連体形 |
月 | ー |
かも | 詠嘆の終助詞 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。