白居易『長恨歌』
このテキストでは、白居易が詠んだ『長恨歌』の原文(白文)、書き下し文、現代語訳とその解説を記しています。今回はその2回目です。
※長いので全文を12段に区切り、その都度書き下し文と現代語訳、解説を記しています。
※前回のテキスト:
「漢皇重色思傾国〜」書き下し文・現代語訳と解説
原文(白文)
九重城闕煙塵生
千乗万騎西南行
翠華揺揺行復止
西出都門百余里
六軍不発無奈何
宛転
蛾眉馬前死
花鈿委地無人収
翠翹金雀玉搔頭
君王掩面救不得
迴看血涙相和流
■書き下し文
九重(きゅうちょう)の城闕(じょうけつ)煙塵生じ
千乗万騎西南に行く
翠華(すいか)揺揺として行きて復(ま)た止まり
西のかた都門を出ずること百余里
六軍発せず奈何(いかん)ともする無く
宛転たる蛾眉(がび)馬前に死す
花鈿(かでん)地に委して人の収むる無し
翠翹(すいぎょう)金雀(きんじゃく)玉搔頭(ぎょくそうとう)
君王面を掩(おほ)ひて救ひ得ず
迴(かえ)り看て血涙相和して流る
■現代語訳(口語訳)
宮殿の城門には煙塵が生じ、
千台の戦車と万の騎兵たちは(落ち延びて)西南に向かっていきます。
皇帝の旗はゆらゆらと揺れ、進んではまた立ち止まります。
都の門を出て西に進むこと百余里のところで、
全軍が動こうとせずに、(皇帝は)どうしようもなく、
美しい眉をした美女(楊貴妃)は、馬の前で死んでしまいました。
額につけた装飾品は地に落ちて、誰も拾う者はいません。
カワセミの羽の髪飾りも、孔雀の形をした黄金のかんざしも、玉で作られたかんざしも(地に落ちたままです)。
皇帝は顔を覆うばかりで救うこともできず、
振り返って見ては、(皇帝は)血と涙を一緒になって流していました。
■単語解説
翠華 | 皇帝の旗 |
蛾眉 | 蛾の触角のようになめらかな弧を描いた眉のことで、転じて美女を意味する |
花鈿 | 眉の間(額)にほどこす化粧。または化粧のかわりに額に付ける装飾品 |
翠翹 | カワセミのはねの髪飾り |
■押韻
「生と行」、「止、里、死」、「収、頭、流」がそれぞれ韻を踏んでいます。