坤元録の御屏風こそ
坤元録(こむげんろく)の御屏風こそ、をかしうおぼゆれ。漢書の屏風は、おほしくぞ聞こえたる。月次の御屏風もをかし。
節分違へなどして
節分違へなどして夜ふかくかへる、寒きこといとわりなく、おとがひなどもみな落ちぬべきを、からうじて来(き)つきて、火桶ひき寄せたるに、火のおほきにて、つゆ黒みたる所もなくめでたきを、こまかなる灰の中よりおこし出でたるこそ、いみじうをかしけれ。
また、ものなどいひて、火の消ゆらむもしらずゐたるに、こと人の来て、炭いれておこすこそいとにくけれ。されど、めぐりに置きて、中に火をあらせたるはよし。みなほかざまに火をかきやりて、炭を重ね置きたるいただきに、火を置きたる、いとむつかし。