|
|
|
更新日時:
|
|
![]() |
宇治拾遺物語「留志長者のこと」(帝に憂へ申せば〜)のわかりやすい現代語訳と解説 |
著作名:
走るメロス
2,389 views |
宇治拾遺物語「留志長者のこと」
このテキストでは、宇治拾遺物語に収録されている「留志長者のこと」(帝に憂へ申せば〜)の現代語訳・口語訳とその解説をしています。
※前回のテキスト:「留志長者のこと」(憎しと思しけるにや〜)の現代語訳と解説
原文・本文
帝に憂へ申せば、
「母上に問へ。」
と仰せあれば、母に問ふに、
「人に物くるるこそ、我が子にて候はめ。」
と申せば、する方なし。
「腰のほどに、(※1)ははくそといふ物のあとぞ候ひし。それをしるしに御覧ぜよ。」
と言ふに、開けて見れば、帝釈(※2)それをまなばせ給はざらむやは、二人ながら同じやうに物のあとあれば、力なくて、仏の御許に二人ながら参りたれば、その時、帝釈もとの姿になりて御前におはしませば、論じ申すべき方なしと思ふほどに、仏の御力にて、やがて須陀洹果を証したれば、悪しき心離れたれば、物惜しむ心も失せぬ。
かやうに帝釈は、人を導かせ給ふことはかりなし。そぞろに長者が財を失はむとは、(※3)何しに思し召さむ。(※4)慳貪の業によりて地獄に落つべきを、あはれませ給ふ御こころざしによりて、かく構へさせ給ひけるこそめでたけれ。
現代語訳・口語訳
帝に訴え申し上げると、
「母に訪ねなさい。」
とご命令があるので、母に尋ねると、
「人に物を与える(方)こそ、我が子でございましょう。」
と申すので、どうしようもありません。
「腰のあたりに、ほくろというもののあとがございました。それを証拠としてご覧ください。
と言うので、(服の腰のあたりを)開けて見ると、帝釈天はそれを真似なさらないでしょうか、いやなさるはずです、二人とも同じようにほくろのあとがあるので、どうしようもなくて、仏の御前に二人そろって参上したところ、その時、帝釈天がもとの姿になって(仏の)御前にいらっしゃるので、(これではどちらが本物か)議論し申し上げる方法がないと(留志長者が)思っているうちに、仏の御力で、すぐさま須陀洹果(の悟りを)開いたので、卑しい心が離れ、物をもったいないと思う心もなくなってしまいました。
このように帝釈天は、人をお導きになること計り知れません。理由もなく長者が財産を失おうとは、どうしてお思いになるでしょうか、いやお思いになりません(そうなるのにはきちんと理由があるのです)。(長者が)強欲の報いによって地獄に堕ちるはずのところを、気の毒にお思いになるご意向により、このようにおたくらみになられたことは素晴らしいことです。
品詞分解
※宇治拾遺物語「留志長者のこと」(帝に憂へ申せば〜)の品詞分解
単語・文法解説
(※1)ははくそ | ほくろ |
(※2)それをまなばせ給はざらむやは | 「やは」が反語を表す係助詞 |
(※3)何しに | ここでは「どうして〜か-いや、〜ない」と反語で訳す |
(※4)慳貪 | けち、強欲 |
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
宇治拾遺物語「留志長者のこと」(憎しと思しけるにや〜)のわかりやすい現代語訳と解説
>
源氏物語 桐壺 その16 高麗人の観相、源姓賜わる
>
古文単語「やぶる/破る」の意味・解説【ラ行四段活用/ラ行下二段活用】
>
宇治拾遺物語『歌詠みて罪を許さるること(今は昔、大隈守なる人〜)』の現代語訳・口語訳と解説
>
枕草子『すさまじきもの』(験者の、物の怪調ずとて〜)の現代語訳
>
方丈記『養和の飢饉(また養和のころとか〜)』の現代語訳と文法解説
>
デイリーランキング
注目テキスト