百人一首(5)
奥山に もみぢ踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
奥山にもみぢ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき」の現代語訳・口語訳と解説(係り結びなど)、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、
古今和歌集にも収録されています。
※百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。
原文
(※1)奥山に もみぢ踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時(2※)ぞ 秋は悲しき
ひらがなでの読み方
おくやまに もみぢふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき
現代語訳
人里離れた奥深い山で紅葉を踏み分けて鳴いている鹿の声を聞くときこそ、秋は悲しい(と感じられることだよ。)
解説・鑑賞のしかた
この歌は、三十六歌仙の一人
猿丸大夫(さるまるのたいふ / さるまるだゆう)によって詠まれたものです。古今和歌集では詠み人しらずとなっています。猿丸大夫について、正確なことはわかっていません。
二句目の「もみぢ踏み分け」の主語を「鹿」とする説と、「作者」とする説があります。秋になると雄鹿が雌鹿を求めて鳴くと言われていることから、「鹿」を主語と解釈するのが一般的です。このテキストでもそのように解釈しています。主語は鹿ですが、雄鹿が雌鹿を求めて鳴く姿を、恋い慕う女性(妻や恋人など)を思う作者自身に重ねているようにも思えます。
主な技法・単語・文法解説
■単語
■(※2)係り結び
~ぞ秋は悲しき | 「ぞ」(強意の係助詞)⇒「悲しき」(シク活用の形容詞「かなし」の連体形)が係り結び。 |
■句切れ
句切れなし。
品詞分解
※名詞は省略しています。
奥山 | ー |
に | 格助詞 |
もみぢ | ー |
踏み分け | カ行下二段活用「ふみわく」の連用形 |
鳴く | カ行四段活用「なく」の連体形 |
鹿 | ー |
の | 格助詞 |
声 | ー |
聞く | カ行四段活用「きく」の連体形 |
とき | ー |
ぞ | 強意の係助詞 |
秋 | ー |
は | 係助詞 |
悲しき | シク活用の形容詞「かなし」の連体形 |