百人一首(12)遍昭/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解
天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ」の現代語訳・口語訳と解説(句切れ・倒置法など)、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、
古今和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。
原文
天つ風 (※1)雲の通ひ路 吹きとぢよ (※2)をとめの姿 (※3)しばしとどめむ
ひらがなでの読み方
あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ
現代語訳(口語訳)
空を吹く風よ、雲の中の(天女が天と地上を行き来するという)通い路を吹き閉ざしておくれ。天女たちの姿をもう少し(この地上に)とどめておこう。
解説・鑑賞のしかた
この歌は、六歌仙および三十六歌仙の一人
遍昭(へんじょう/僧正遍昭とも)によって詠まれたものです。桓武天皇の孫で俗名は良岑宗貞(よしみねのむねさだ)と言います。
陰暦11月中旬に行われる新嘗祭(にいなめさい)の翌日に、器量のよい未婚の娘たちが「五節の舞」を披露しました。ここで舞う姫たちを天女に例えて詠んだものです。「美しい女性(天女)の舞をもっと見ていたい、だから天へ帰れないように天への路を閉じておくれ」と、自身の感情をストレートに表現した歌です。
主な技法・単語・文法解説
■単語
(※1)雲の通ひ路 | 天と地をつなぐ道。天女たちが通ると考えられていた |
(※2)をとめ | 宮中で舞う姫たちを天女と例えている |
(※3)しばしとどめむ | 「優雅に舞う姫たちをもっと見ていたい、帰らないでおくれ」という気持ちがこめられている |
■倒置法
倒置法が採用されています。
■句切れ
三句切れ。
品詞分解
※名詞は省略しています。
天つ風 | ー |
雲 | ー |
の | 格助詞 |
通ひ路 | ー |
吹きとぢよ | ダ行上二段活用「ふきとづ」の命令形 |
をとめ | ー |
の | 格助詞 |
姿 | ー |
しばし | 副詞 |
とどめ | マ行下二段活用「とどむ」の未然形 |
む | 意志の助動詞「む」の終止形 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。