はじめに
このテキストでは、
古今和歌集及び小倉百人一首に収録されている歌「
ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」の現代語訳・口語訳と解説、そして品詞分解を記しています。
※古今和歌集(こきんわかしゅう)は、平安時代前期の勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)です。勅撰和歌集とは、天皇や上皇の命令により編集された和歌集のことです。
原文
(※1)ひさかたの光のどけき春の日に (※2)しづ心なく花の散るらむ
ひらがなでの読み方
ひさかたの ひかりのどけきはるのひに しづこころなく はなのちるらむ
現代語訳
日の光がこんなにものどかな春の日に、どうして桜の花だけは(落ち着いた心がなく)散っていってしまうのだろうか。
解説・鑑賞のしかた
この歌は
紀友則が詠んだ歌で、
小倉百人一首にも収録されています。ちなみに紀友則は土佐日記で有名な紀貫之のいとこです。
さて、この歌の楽しみかたです。まず「ひさかたの」は「光」にかかる
枕詞です。「ひかりのどけき」は「光がのどかである」と訳しています。ここで言う「花」とは「桜の花」のことで、「
暖かくなってきた春の日なのに桜の花だけはさっさと散っていってしまうのはなんでだろうか」という、慌ただしく散る桜を惜しむ気持ちを表した、とても日本らしい歌ですね。
単語・文法解説
(※1)ひさかたの | 「光」にかかる枕詞 |
(※2)しづ心 | 落ち着いた心 |
品詞分解
※名詞は省略しています。
ひさかたの | 枕詞 |
光 | ー |
のどけき | ク活用の形容詞「のどけし」の連体形 |
春 | ー |
の | 格助詞 |
日 | ー |
に | 格助詞 |
しづ心 | ー |
なく | ク活用の形容詞「なし」の連用形 |
花 | ー |
の | 格助詞 |
散る | ラ行四段活用「ちる」の終止形 |
らむ | 現在の原因推量の助動詞「らむ」の連体形 |