百人一首(8)喜撰法師/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
このテキストでは、
(小倉)百人一首に収録されている歌「
わが庵は都のたつみしかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり」の現代語訳・口語訳と解説(係り結び、掛詞、句切れの有無など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、
古今和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
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暗記に役立つ百人一首一覧
原文
わが庵は 都の(※1)たつみ (※2)しか(※3)ぞ住む 世を(※4)うぢ山と 人はいふなり
ひらがなでの読み方
わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり
現代語訳
私の粗末な小屋は都の東南にあって、このように(心安らかに)住んでいる。(それなのに)世の中を憂えて住む宇治山だと世間の人々は言っているそうだ。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、平安時代の歌人
喜撰法師(きせんほうし)です。現代に伝わる歌は2つのみと謎の多い人物ですが、六歌仙の一人として知られています。
都から離れて宇治山に住むと聞くと、(「宇治」と「憂し」をかけて)世の中を憂えて隠れ住んでいるんだと思われがちだけど、実際にはそうではなくこのように気楽に暮らしているんですよというメッセージ性のある歌です。
主な技法・単語・文法解説
■単語
(※1)都のたつみ | 都は「平安京」、たつみ(巽)は「東南」の方角を指している。 |
(※2)しか | 「しか」の指す内容については様々な解釈があるが、ここでは「このように=心安らかに、のんびりと」の意で訳す。 |
■(※3)係り結び
(※3)ぞ住む | 「ぞ」(強意の係助詞)⇒「住む」(マ行四段活用「すむ」の連体形)が係り結び。 |
■(※4)掛詞
「うぢ」は、地名の「宇治」と、憂鬱であるを意味する「
憂し」をかけた掛詞。
■句切れ
三句切れ。
品詞分解
※名詞は省略しています。
わ | 代名詞 |
が | 格助詞 |
庵 | ー |
は | 係助詞 |
都 | ー |
の | 格助詞 |
たつみ | ー |
しか | 副詞 |
ぞ | 係助詞・係り結び |
住む | マ行四段活用「すむ」の連体形・係り結び |
世 | ー |
を | 格助詞 |
うぢ山 | ー |
と | 格助詞 |
人 | ー |
は | 係助詞 |
いふ | ハ行四段活用「いふ」の終止形 |
なり | 伝聞の助動詞「なり」の終止形 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。