「かなし/愛し」の意味・活用・使用例【シク活用の形容詞】
このテキストでは、シク活用の形容詞「
かなし/愛し」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「かなし」には
①愛し
②
悲し/哀し
の用法があるが、ここでは「①愛し」について扱う。
形容詞・シク活用
未然形 | かなしく | かなしから |
連用形 | かなしく | かなしかり |
終止形 | かなし | ◯ |
連体形 | かなしき | かなしかる |
已然形 | かなしけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | かなしかれ |
■意味1
かわいい、愛おしい。
[出典]:
筒井筒 伊勢物語
「...とよみけるを聞きて、かぎりなく
かなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり。 」
[訳]:...と詠んだのを聞いて、(男は女のことを)この上なく
愛おしく思って、河内へも行かなくなりました。
■意味2
心がひかれる、心にしみておもい。
[出典]:古今和歌集
「陸奥はいづくはあれど塩竈の浦こぐ舟の綱手かなしも」
[訳]:陸奥では他の場所はともかく、塩竈の浦を漕ぐ船の引き綱が心にしみるものです。
■意味3
見事だ、うまい。
[出典]:古今著聞集
「かなしくせられたりとて見あさみけるとなむ。」
[訳]:見事に(化物を退治)なさったといって(他の者は)見てびっくりしたということです。