式を展開するときの工夫
まず次の式を見てください。
(a+b+c)(a+b-c)
これまで学習してきた展開の公式では展開ができないので
(a+b+c)(a+b-c)
=a(a+b-c)+b(a+b-c)+c(a+b-c)
=a²+ab-ac+ab+b²-bc+ac+bc-c²
=a²+b²-c²+2ab -①
と、ちまちまと展開をするしか方法がありません。しかしこれでは、計算する項数が多いので、間違えやすい上に時間がかかってしまいます。そこで
ちょとした工夫で式の展開を楽にするテクニックを紹介しましょう。
(a+b+c)(a+b-c)を工夫して展開
(a+b+c)と(a+b-c)で共通していく項がないか探します。するとどうでしょう。
"a+b"がどちらの多項式にもありますね。
"a+b"を1つの文字"A"として計算をする
"a+b"が共通ですので、これを1つの文字"A"と考えて計算をします。つまり、
(a+b+c)(a+b-c)=(A+c)(A-c)
と考えて計算をするわけです。するとどうでしょう。
"(a+b)(a-b)=a²-b²"という乗法公式で展開ができそうですね。
(A+c)(A-c)=A²-c²
次は"A"を"a+b"に戻して計算を続けます。
A²-c²=(a+b)²-c²
"(a+b)²=a²+2ab+b²"という乗法公式より
(a+b)²-c²=a²+2ab+b²-c²
最初にちまちまと展開して求めた①と同じ答えになりましたね。
ちょっとした工夫で式の展開を楽にすることができることを覚えておきましょう。それでは練習問題です。
練習問題
問題 次の式を工夫して展開せよ
(1) (a+2b+c)²
■(1) (a+2b+c)²の展開
これまで学習してきた乗法公式に当てはめるために、
a+2b、2b+c、またはa+cのどれかを1つの文字と考えて計算をしていきます。どれを選らんでもかまいませんが、ここでは"a+2b"を1つの文字"A"と考えて展開をしてみましょう。
(a+2b+c)²=(A+c)²=A²+2Ac+c²
あとは"A"を"a+2b"に書き直して展開を続けます。
A²+2Ac+c²
=(a+2b)²+2(a+2b)c+c²
=a²+4ab+4b²+2ac+4bc+c²
=a²+4b²+c²+4ab+4bc+2ac
正しいかどうか、(a+2b+c)²を工夫せずに展開をして確認してみましょう。
(a+2b+c)²
=(a+2b+c)(a+2b+c)
=a(a+2b+c)+2b(a+2b+c)+c(a+2b+c)
=a²+2ab+ac+2ab+4b²+2bc+ac+2bc+c²
=a²+4b²+c²+4ab+2bc+2ac
となり、工夫して展開したものと同じ答えになりましたね。